New York の近代美術館こと Museum of Modern Art は、MoMA ( モーマ ) の愛称で広く知られているが、先日久々に足を運んだ。
MoMA に籍を置く写真家の友人に、近く始まる特別展のオープニングに誘われたのである。
美術館では特別展など定期的に展示物を変えるが、その展示が始まる前にパトロンなどを美術館に招いて、オープニングパーティが開かれる。ギャラリーでも新しい展示を始める際に、いわゆるレセプションパーティが開かれるが、MoMA のそれはさすがに規模が大きい。
この日同じく誘いを受けて一緒に行ったのは、森下大輔氏。彼は2006年にコニカミノルタ・フォトブレミオ賞を受賞した写真作家である。現在 New York に滞在中で、ときどき一緒に写真を撮りに行ったり、ギャラリーに足を運んでいる仲間である。
平日の夜6時半に MoMA に向かい、ここで二人の友人と落ち合う。すでに一般公開の時間を終えたとみえ、入り口では招待客のチェックのみ。
中に入るとそこには普段、美術館で見かけるのとは違う風景が広がっている。僕らのように割とカジュアルな顔ぶれも決して少なくないが、この日のためにと着飾ってきた面々もあちこちにいて、中には羽根つき帽子、ドレスやタキシードといった出で立ちの人も。
とはいえアートに携わる参加客が多いせいだろう、仕立てのよい服ながらどこか個性を感じる着こなしの人も多い。
さらに美術館らしからぬ景色というのは、ロビーやパティオに設けられたカクテルバーのせいかもしれない。
アメリカの美術館というとそれこそ時価何億、何十億円もの値段がつくような作品をたくさん擁し、さらにそれらを一種無造作・無防備とも思えるほどの自由度の高さで展示されている。珍しいからといって作品の前にロープが張られているわけでもないし、ガラスケースの中に入っている訳でもない。油絵も写真も彫刻もオーディエンスとの距離をなるべく縮めようとしているかのようだ。その自由度の高さが却って見ている側に「近くまで行って間違ってふれてしまっては大変」というある種の緊張感を生み出している。さらに聞こえるのはオーディエンスのささやき声と足音というのが、さらにその空間に緊張感を増している。
普段はなんとなく厳粛なイメージの美術館でアルコールが振る舞われ、DJ が大音量でアンビエントミュージックを流し、さらにはラジオの中継も行われているのだから、既成の概念をくつがえしてしまう。
バーテンダーもウェイトもたぶんケータリングサービスなのだろう、客の好みでカクテルを作り、トレイにたくさんのシャンパン・ワイングラスを載せ、オープニング会場の隅々までほろよい気分を運んでいる。グラスもプラスチックなんかじゃない ( レストランやバンケット会場と違うのでこういうところでは、可搬性の高いプラスチック製のコップや皿が使われることが多い ) ところが MoMA らしい。
さて今回のオープニングはドイツの作家、Kirchner によるベルリンのストリート風景を主題にした Painting であるが、写真ではなく Paintings でアプローチしているところに関心があった。
所感はこのブログのテーマに関係ないのではしょるが、MoMA については感心したことがもう一つあった。
ほろ酔い加減で特別展の会場にあがり ( さすがにここまではグラスを持って行くことはできない )、誘ってくれた友人と作品を見ながら雑談ついでに、ちょっと調べたいことがあり、すかさずポケットに入っている iPhone を取り出した。
EDGE でもつながるようだが、もしかすると館内では WiFi が使えるかも、と iPhone の無線 LAN をオンにしたところ、やはり MoMA が提供する WiFi ネットワークが見つかった。
早速接続してみると、どうやら iPhone と iPod Touch ユーザ向けに専用のページを用意しているらしい。そういった配慮もうれしいが、よく見ると 「 MoMA Audio 」 なるサービスへのリンクがあるではないか。早速タップしてみると、
今度は言語選択のメニューが表示された。うれしいことに日本語もサポートされている。
前のメニューで日本語を選ぶと、ここからは表示が日本語に切り替わった。
想像したとおりどうやら手持ちの iPhone を使って、作品に関するガイドサービスを利用できるようだ。
MoMA を始め、Metropolitan Museum など比較的大きな美術館/博物館ではヘッドセット貸し出しによる館内ガイドサービスがあり、これによって自国語で詳しい説明を聞くことができる ( そういえば広島の原爆記念館にもあったことを思い出した )。
展示物の横に張られた作品名や作者名のラベルにオーディオサービス用の数字が何桁かプリントされているので、通常はテンキーの着いた専用機にこの数字を入力するだけでその作品におけるガイドを聞くことができる。
MoMA は館内に WiFi を完備しており、このオーディオサービスを iPhone にも展開したのだろう。
考えてみればこれは美術館にとっても利用者にとってもメリットがある。
美術館からすれば常にバッテリ充電済みのヘッドセットを大量に用意する手間が省け、また中には乱雑に扱われることで専用機は故障もするだろうから、これによって人件費やランニングコストが節約できることになる。
利用者からすれば、ヘッドセットの空きを待つこともなく、もちろん利用料もかからないので節約にもなる。
こういったサービスが可能になったのは iPhone ゆえだろう。世界各国で一律の仕様で発売され、またローミングなども行われるから、アメリカに来る海外旅行客も持参の iPhone でサービスを享受できるのだ。ガラパゴスと呼ばれる日本独自の仕様の携帯電話だったらこうはいくまい。
すでに Starbucks でも iPhone 向けの専用サービスが提供されているが、iPhone の普及率の高さがある種のインフラとなって今後このようなサービスはあちこちで見られるのではないか。海外でこういったサービスが受けられるのは土地勘の無い旅行客にはとてもありがたい。
オープニングパーティはしばらく続きそうな気配だったが、ほろ酔い気分のまま MoMA を後にした。
気がつけば飲んでばかりでこの晩は食事らしい食事を取っていないことに気がついた。僕らはほろ酔いついでにもう一軒、日系の居酒屋へ向かった。
MoMA
http://www.moma.org/
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