この土曜日は久しぶりに授業というものを受けてきた。
・・・と最初の一文を書いたところで疑問が頭をもたげた。
果たして授業を 「 受ける 」 というのは正しい日本語の使い方なんだろうか、と不安になったのである。
「 授業 」 なんて単語、アメリカで暮らしていると普段からそう使う言葉ではない。「 授業 」 という言葉に限らず、こんな風に言葉と言葉のかかりなど特に曖昧になりがちなのである。たとえば日本では 「 保険 」 は 「 入る 」「 加入 」 するものだが、英語では insurance は 「 買う 」 ものとなっている。
なのでこんな単純な言葉遣いでも 「 自分の日本語用法が間違っていないだろうか 」 とブログに書くときには緊張してしまうのである。
「 授業って教えを授かるものだからそれを受ける、というのはおかしいような。それとも授かるではなくて授ける、のかな? 」 などと考え始めると、とたんに自信喪失して手元の辞書やインターネットで調べなくては気が済まなくなる。
さて授業の話に戻るが、話の発端はこんなところである。
僕の自動車保険は半年に一度更新となっていて、今月に新しい契約書と請求書が送られてきた。
契約を重ねるうちに保険料が安くなってきていたのだが、ここ数年はディスカウントが受けられる最大のプレミアムになり、ここ数年はほとんど保険料が変わらなくなっていた。
ところが今回の請求書を見て驚いた。あがっているのである。
アメリカでの自動車保健代っていくらくらいだろう、と思う人のために書いておくと、僕の場合は6ヶ月契約でおよそ$600~$650ぐらいである。
これが安いか高いかは同じ車でもどこに住んでいるかとか、年齢とか、もちろん契約する保険の種類によっても変わるのでなんとも言えないが、フルカバレッジでこの値段は安い方だったろう。
それが今回は$900を超えていた。
実は値上げの理由に対して心当たりもあったのだが、契約書にはその理由が特に書かれていない。
そこで念のため保険会社にその理由を尋ねてみることにした ( セコイ )。あわよくば間違いであって欲しいという、あわない期待からである。
案の定、それは去年のスピード違反に捕まったことに由来していた。
そのとき電話で対応してくれたカスタマーサポートの人が 「 それじゃあなにかディスカウントの方法がほかに無いか調べてみることしましょう 」 と言って、車のセーフティ機能の確認や、安全運転講習受講の有無とか、平均運転距離などいろいろ尋ねてきた。
その中で 「 住所の確認をさせてください。データによるとあなたは Long Island にまだ住んでいることになっているけど・・・ 」 と言うので、そんはずはない、現に契約更新の書類は今住んでいるところに毎回送られてきているのだから、というと、「 住所と送り先は別になっていてもかまわない。あなたの場合は送り先が今の住所になっているけど、実際の住所の変更は行われなかったみたいですね。それでは新住所で計算してみましょうか・・・」と言ってしばらく無言になった。
ところがしばらくすると「あらっ・・・」みたいな驚きの声があがって 「 I'm sorry but it's making worse.. ( 却って悪い結果になってしまったんだけど・・) 」 といって半年分の保険が1400ドル近くまで上がってしまうとのことだった。
やはり NYC の方が盗難事故や破損の事故が多く、保険の請求額も高いのだろう。そのために郊外に比べるとこのくらいの値段になってしまうのだそうだ。
そうは言っても 「 はいそうですか 」 とはそう簡単に言えないほどの値上げなので、もう少し他社の保険を検討してまた後で連絡します、と言って電話を切った。
その後、友達の薦めの他大手保険会社に電話して、見積もりを頼んでみると、今まで受けられるはずの保険より手厚い保護を受けても、半年の保健代が$500以下になりそうだ、との回答だった。
さすがに$1400から$500に保健代が下がるとあっては乗り換えない手は無い。早速お願いします、といって New York 州の運転免許番号を伝えると、半年の価格が先ほど提示された見積金額より$100ほど高くなった。それでも今まで払っていた保健代より安いので、大喜びで契約をしようとすると、相手の人はとても申し訳なさそうにしている。
どうやら$100も上がることに、罪悪感を感じているようである。僕からすればスピード違反分が加算されたのだから仕方ない、それでも今まで安いのだから・・と思っていたのだが、カスタマーサポートの人は 「 是非 New York 州の安全講習を受けるのを進めます。受講料は$50ぐらいだけど、違反したポイントを差し引くと同時に保険も10%ディスカウントになりますから 」 という。
そういえば$1400になりそうだ、と言った今の保険会社もディスカウントの方法が無いか探しているときに安全講習の事をあげていた。
これはいろいろな呼び名があって、「 Safety Driving 」 とか 「 Defensive Driving 」 とか 「 Accident Prevention 」 コースと書かれているが実際どれも同じである。
$49 の参加費を払い、公認のドライビングコースで行われる授業に一日出席することで、交通違反のポイントを4ポイント減らし、どの自動車保険会社も一律の割引を受けられるプログラムである。一度講習を受けると保険会社の割引は3年間継続して受けられるらしい ( ということは割引を受けるためには3年に一度講習を受けろというだ )。
これまで保険代金がそんなに高くない、と思っていたこともあってこのコースの存在自体は知っていても、一度も参加したことがなかった。
けれども今回は交通違反とそれに伴う保険料金の値上げということもあって、参加してみることにした。
それがこの土曜日だったのである。

土曜日の朝、この日は久しぶりに New York の冬らしい切れるような冷たい空気が広がっている。
うちから車で行くこともできたが、土曜日なので講習会場近辺の駐車はパーキングメーター使用で、時間単位になる。講習の途中でコインを入れに行くのはさすがにまずいだろうと地下鉄で行ったのだが、それは僕の考えが間違っていたようだ。
この後授業が開始すると、車で来た参加者はビデオの途中でも講義の途中でもコインを入れに行ったのだから。
第一、講習の始まる時間通りに来た人は僕のほか二人だけで、あとの全員は5分から最長一時間遅れて入ってきているのだが、スクール側はあまり気にしていないようだ。
参加者は僕を入れて全部で11人。そもそも教室と言うには狭いウナギの寝床のようなところだったから、これでもこの部屋には大人数じゃないかと思ったが、多いときは20人を超えるらしい。
場所柄、スパニッシュの参加者も多く、講師もアルゼンチン出身の人だったが、この日の講習はあらかじめ使用言語の案内を受けたとおり英語で行われた。それでも参加者の人他は気にせず質問はスペイン語であがるし、講師もまずは個人的にスペイン語で説明してから、クラスの人たちに英語で説明するので二度手間になることも。
とはいっても最初のスペイン語で話しているときにわかっている人がクラスの半数はいるのだが ( 笑 )。
さて講習の中身だが、ほとんどの時間をビデオを見て過ごすもので、テストとは名ばかりの簡単なクイズに答えるだけのものだった。
そのビデオは悪天候時や飲酒をした時の運転など、いくつか章が分かれているのだが、中には単純なドラマ時立てのものもあった。
こういう映画で感情移入もあったものじゃないと思うのだが、映画館での映画さながらに野次を入れる人が多いのには笑ってしまった。
「 普通はそこで運転するかよ 」 とか 「 オッオー 」 などの掛け声が何人かの口から上る。
休みの日の朝、わざわざ早起きしてこの講習に出る人たちは、それなりにワケがあって、それは違反点数を下げたいとか、免停になった人だとか、事故で保険代があがってしまった人たちなのだ。ちょっとばかり映画よりはまじめに見るべきだと思うのだが ( 笑 )、アメリカではこんな時間まで楽しんでしまうものなのかもしれない。
おかげで行く前は気が進まなかった安全運転講習も、愛すべき彼らのおかげであっというまの5時間だった。
帰りに近くのベンダーから Cafe con leche ( スパニッシュコーヒー ) を買って手と胃の暖を取りながら地下鉄に乗り込んだのだった。