ときどき利用する電車の窓から見えるその景色。ずっと気になっていた建物があった。その後何度か近くまで行ったのだが、建物の外観がある意味すごいのでとても中に入れるとは思ってなかった・・・
写真はすべて EOS 10D。

これが地下鉄7番ライン。この窓から見えるのが下のような建物。
]New York の地下鉄の地下鉄といえば、かつては車両の外も中もイタズラ描きだらけだった。僕が学生時代に旅行で New York に遊びに来たときは、夜の地下鉄乗車は控えた方が良い、と人々が話すほど安全ではなかったのだが軽犯罪こそいまでもあれ、凶悪犯罪は劇的に減り、夜はもちろん深夜早朝でも安心して利用できるようになった。
一昔前の New York の地下鉄のイメージと言えば内外に描かれたいたずら描き ( グラフィティ ) だが、これも新しい車両の導入とともになりを潜め、これまたイメージ向上に一役買った。これは従来の車両に変えて、ステンレスで出来た新しいタイプに入れ替えたことからペイントしてもすぐに洗い落とせるようになったため、描く方も気勢をそがれたのだろう。
おもしろいのはこのステンレス車両、New York を走るすべての路線に入ったわけでなく、The Bronx と Brooklyn を結ぶいくつかの路線と Times Square から Queens の Flushing を結ぶ路線には従来の車両がつい最近まで使われていた。後者の路線では今ちょうどステンレス車両と入れ替えている最中で、まだ旧来型の車両を時々見ることが出来る。これら従来型の車両がまだ走っているにもかかわらず、今では地下鉄にグラフィティを見ることが無くなったのは、描く人が減ったのか、「きっと流行ってないからなんだ」などと考えていた。
ところが奇しくも「旧来の地下鉄」と上で紹介した地下鉄 - これは実際には7番線だが - に載ると Queens から Manhattan に入る直前にビル全体がグラフィティで覆われた、といっても良いような建物が右側に見えるのだ。 いつも「何だろうこのビルは?」と思ってみているとそのまま地下鉄は地上から徐々に地下に潜り、East River の下を走って Manhattan に入っていく。Grand Central 駅 や Times Square 駅に着くとあたふたと電車から飛び降り、すっかりこのビルのことを忘れている。
その謎がやっとこの間解けた。

縦と横の構図、新と旧、スーツとラクガキ・・となんかアンバランスなところがNew Yorkらしくもある。後ろの高層ビルはCITIBANKのもの。
週末 Manhattan で用事があり地下鉄に載ると、Manhattan と Queens の間はメンテナンス工事のためサービス停止となっていた ( 最近週末はいつもこうだ )。で、代替路線として地下鉄7番ラインに乗り換えて Manhattan に向かったのだが、そのとき近所に住む友人も一緒だったのでこのビルが視界に入ってきたときに、このビルのことを尋ねてみた。すると「ああ、知っているよ、中はギャラリーか何かになっていて誰でも入れるんじゃなかったかな?」という答えが返ってきた。
たまたま翌日は日曜日で夕方から時間がぽっかり空いたので、新しく買ったデジタルカメラとレンズを持って行ってみることにした。目的の場所はうちからは車で5分たらずのところにある。実を言うと、New York Watch で何度か紹介している PS1 のすぐそばなのだ。近くに車を停め、カメラを持って降りる。
PS1 をのぞくと周りは倉庫か駐車場、それに工場といった建物が並び、しかも日曜日と言うことでほとんどひとけが無い。細い路地を歩くと黒塗りの鉄の扉が開いていて、まるで「おいでおいで」をしているようにも見える。夕方ということもあり、暗くなると建物の写真も撮りにくくなる、ということでまずはあたりをちょっとまわって写真を撮ったのが上の写真だ。
何枚か写真を撮った後で早速先ほどの扉に戻り、中に入る。中は階段の踊り場で、どうやら2階に登らないと行けないようだ。階段の壁も扉と同じく真っ黒に塗られ、あちこちにパーティやクラブなんかのチラシが張ってある。
2階にあがる、中は一変して白い壁になっている。天井が高く、かつては倉庫か工場だったと想像に難くない。中は壁で仕切られ、個室が出来ている。通路の両脇にアパートなんかによくあるような鉄の扉が、各フロアおよそ10くらいは見えた。
その扉の大半は開け放たれていて、覗き込まなくとも中の様子を見ることが出来る。どうやらそれぞれの部屋はアトリエというか Studio になっていて、アーチスト達がここで作業をしたり、制作したものを展示、販売しているようだ。

ビルの裏側から見た風景。この中がアートスタジオ兼ギャラリーになっている。

これもビルの裏側から見た風景。夕日を浴びて退廃的!?
僕が行ったのが日曜日の夕方ということもあって半分くらいの扉は閉まっていたが、それでも開いている部屋には部屋の主 ( アーチスト ) やその作品を見に来た人たちがいて、思った以上に人が訪れていた。中には講習のようなものを開いている部屋もあり、そこでは10人くらいの人たちが座ってレクチャーを受けているシーンも見かけた。
この建物に入る前は外壁からアーチスト全員がこういうグラフィティを描いているのかと思ったが、そんなことはなくアートの種類もペイント、彫刻、家具風のオブジェなど様々で外部からはちょっと想像できない。おそらく市や区がこの倉庫跡のような古ぼけたビルを借り上げ、Open Studio としてアーチスト達に提供しているのだろう。こうやって廃墟の様な建物でも再利用することで、アーチストにチャンスを与え、またその Studio を公開することで興味のある人も実際に制作現場を見に行くことができたりと面白い「場」を提供してくれている。
近所の見所はもうだいぶ行った、と思っていたのだが、こうやってみると生活を豊かにするものはどこにでもあって、自分が探さないだけなんだぁと思った次第。
この Open Studio に行ってみたいと言う人はメールででも連絡ください。住所や名称などははっきりとわからないけれど、だいたいの場所なら教えられます。
地下鉄7番ライン Manhattan 方面行きに乗り、右側を見ていると簡単に見つけることが出来るので、建物がどれかわかったら地下鉄を折り返しで乗ってもどって来てたどり着くことは出来るはず。住所など知らなくても見た目の印象がすごいので見逃すことはまずあり得ない。


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