
数年前にアメリカで一足先に公開され、すでに DVD も発売されているフランス製アニメーション映画、「 The Triplets of Belleville 」 というのがあるが、きっと知っている人も多いだろう。
僕がこの映画を知ったのは一年か二年前に友達の家でこの DVD を見たからなのだが、フランス語のままアメリカでも吹き替えされることになくそのまま公開された。正確にいうと会話は多少あるのだが、全くといっていいほど会話がわからなくてもその描写のために何を話しているのかが頭の中で想像できてしまう、ある意味すごい映画だ。
そのアニメーションは昔のディズニー風でなければ、日本風でもなく、また最近の CG アニメとはある意味正反対のスタイルだといってもいいかもしれない。デフォルメして描かれた絵のせいでそれはノスタルジックにすら見える。
宮崎アニメとは違った意味でこちらも子供も大人も楽しめるアニメとなっているのだが、その中で特に登場人物の性格がいきいきと伝わってくることが僕が一番この映画の気に入っているところだ。
登場人物?の一匹として犬が登場するのだが、冒頭でこの犬の習癖についてかなりの時間が描写される。そのせいですっかりこの犬のことを全編通して愛らしく感じてしまうのはまさにマジックである。
さてその犬の習癖なのだが、主人公一家 - といっても少年とおばあさん、そしてこの犬だけなのだが - が住んでいる小さな一軒家は鉄道のすぐ横に建てられており、一日何度か列車が通過するたびに犬はそのでかい図体を引きずって鉄道を間近に見ることができる2階に登るのだ。そして列車が轟音をたてて通り過ぎる間、犬も一緒に遠吠えを繰り返す。
うちにも犬がいたが、やはり音楽をならしながら町にやってくる移動販売の軽トラックと一緒に遠吠えをしていたものだ。
さて舞台を New York の、それも現代に移すと実は僕のところでも 「 The Triplets of Belleville 」 さながらの風景が見られるのだ。
とはいってもうちに犬がいるわけではなくて、目の前の地下鉄が通るたびに高架下の車のアラームが誤動作をしてウーウーピーピーガーガーとこれまた遠吠えをするのだ。
本来誰かが車を揺らしたとか、窓ガラスを割ったとか、トランクを開けた、というような時にアラームが動作するものなのだが、おそらく高架を走る地下鉄のせいでその下の道が揺れているのか、これまた地下鉄が発生させる騒音があまりにも大きいため一定の音量で動作してしまうのか謎であるが、地下鉄が通り過ぎるたびに何台かの車のアラームが鳴り響く。
映画と違うのはこちらは New York の地下鉄なので朝から晩まで、24時間走り続けており、しかもラッシュアワーは数分おきにやってくるのでこの車の遠吠えの回数は遙かに多いのだ。
幸いなことに僕の部屋からは地下鉄の騒音は聞こえてもこのアラームは建物が間にあるせいでそれほど気にならない。
加えてアラームは数分鳴ると止まるので角を立てるほどのことでもないのだ。
ちなみに数分でアラームが止まるようになったのは最近のことで、僕が初めて New York の土を踏んだ20年ほど前は、街の騒音に圧倒されたものだ。
東京から来た僕が、警察、救急車のサイレン、そして道に止められた車から止まることなく鳴り続けるアラームに驚いたのだから、昔は如何に New York という街がうるさかったかわかるというものだ。
New York での街の騒音が抑えられるようになったのは現市長ブルームバーグによるところが大きい。かなり厳しい騒音条例のため車のアラームは最大数分に限定されることになったし、最近では移動型アイスクリームのオルゴールが奏でる軽やかな音楽も販売中は鳴らしてはいけないと定められた。
そもそもの案では移動中でもあの音楽を鳴らしてはいけない、というものだったが販売業者の反対 ( とたぶん市民も移動中くらいは良いだろうと反対したのかもしれない ) したことで車を停止したら音楽を止めるという妥協案で一致を見たのだった。
近いうちに NY市では車のアラーム自体が禁止されるだろうという予想がでているが、それはそれでやりすぎなのかもしれない。
少なくとも僕は地下鉄が通るたびに聞こえていた車の遠吠えを懐かしく思い出すに違いない。
さてこの映画のことを調べていておもしろいことに気がついた。アメリカでは公開時のタイトルが 「 The Triplets of Belleville 」 となっていてフランスでは 「 Les Triplettes de Belleville 」 となっている。これだけ見ればアメリカでのタイトルはフランス語の直訳ということがわかる ( Belleville の三つ子姉妹 )。
ところが英国ではこのタイトルが 「 Belleville Rendez-Vous 」 となっているのだった。Belleville の後の言葉が英語でないのはわかったが、はて何だろうと思っていたら、どうやらこれがいわゆる 「 ランデブー 」 ということに気がついた。
はてランデブーというほどロマンチックなデートではないけれど、なぜかこのタイトルの方が映画の雰囲気が合っているようで僕は英国のタイトルの方が気に入った。フランス語がタイトルに活かされているのがその理由かもしれないが。
同じ英語圏でタイトルが違うというのも、おもしろいことである。
まだ見たことがないという人は、是非一度ご覧あれ。

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