門を閉じるアメリカ

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今年アメリカでは移民法が大きく改正されるそうだ。
すでに下院では移民法改正に向けて法案が可決されており、現在上院でも移民法案が議論されている。
あまりアメリカの政治ニュースを追いかけてないのでこれまでメディアの報道に無頓着だったのだが、このところデモや集会が行われていることをニュースで知って改めてメディアの報道に注意を払うようにしている。そのメディアの報道で知ったのだが、面白いことに上院と下院とでは移民法案の内容がまるで先反対なんだとか。

すでに法案が可決されて通過している下院では、不法滞在を重罪ととらえ現在アメリカでの不法移民に対して強制送還手続きを取る上、その後の再入国禁止期間を長く取るとしている。
またくじ引きで永住権を与えてきた、Green Card Lotto ( 宝くじ ) も廃止することが謳われている。さらに陸地を渡ってやってくる不法入国を防ぐためにテキサスやカリフォルニアの国境フェンスを強化することも含まれている。

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▲ かつてヨーロッパからの移民は皆、この自由の女神を目指した。


一方上院では、今現在不法滞在で不法労働をしている移民に対して一定の罰金を払うことで不法ステータスを免除し、何年かの労働ビザを許可するというものである。これを Guest Worker Program と呼んでいる。
さらに労働ビザを取得してその後も何年かアメリカに住んでいる場合は永住権の取得も許可する予定だ。
一番最新の情報では、「 不法ながら滞在歴が5年以上の人に対しては、それまでの税金の支払い・犯罪歴の有無などを確認した上で、$2000払えば合法とし、さらに6年後には市民権申請の手続きも許可する 」 「 2年~5年未満の人にも一定期間の労働許可と滞在許可を与えよう 」 という内容になっていた。

Guest Worker Program 自体はブッシュ大統領も支持を表明しているので、上院案の方が有力ではないかと素人ながらに思うのだが、そう簡単ではないらしく、移民法改正は不法移民に対して厳しい内容になるのではないかとメディアは予想している。

現在アメリカにいる不法移民 ( Undocumented Immigration ) は1100万人とも1200万人いるとも言われている。東京都民の人口と同じくらいといっても、いったいどのくらい多いのか比べる対象が大きすぎて実感できない。
アメリカがその不法移民に対して非常に sensitive なのは、安い賃金で働く移民によるアメリカ経済力の強さがあり、また移民ファミリーが持つ政治票が今後無視できないほど大きな影響を持ってくるからである。
かといって無条件に合法化すれば、それまで安価なことが魅力だった労働賃金もあがるため、移民に対して温情的と見せて人気取りをしている政治家といえども全面的に賛成とはいかないようだ。

現在は上院で民主党と共和党の間で激しいかけひきが行われているが、各地で下院案に対して移民が反対活動を起こしている。
4月もテキサスやカリフォルニアなど移民が多く住む州では大規模なデモや集会が開催された。テレビのニュースで LA や SF のデモの様子を紹介していて、その規模の大きさにびっくりしたが、不思議なことに政治的な活動が比較的アクティブな New York では大きな集会が行われなかった。

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▲ この長い橋の向こう側に、American Dream はあるだろうか。


ところで僕もこのニュースは気になっている。
僕自身はグリーンカードを持っているので 「 永住ビザを持っているなら何も心配はいらないんじゃ? 」 と思う人もいるかもしれない。実際取得から一定の年数を経たので市民権申請手続きを始めることはできるのだが、永住権はあくまでビザの一種であり、許可を取り消されることもありうるのだ。法律が改正されて制度がなくなるかもしれないし、今現在でも犯罪を犯した場合は取り消しになる。
もちろん犯罪を起こす心配をしているわけではないのだが、今回下院が提出した法案には、DWI 違反も国外退去すべきとしているのが気になった。
DWI とは Driving while intoxicated のことでいわば飲酒運転のことである。州によっては DUI - Driving under the influence と呼んでいるところもあるが、これまで殺人など重罪のみ適用してきた永住権取り消しを飲酒運転にも適用することだろう。
New York はそもそも缶ビール2本くらいまで飲んでクルマを運転しても、酒気帯びにはならないこととしている上、僕自身運転するときは飲まないので違反する恐れはないのだが、今回のように永住権も 「 絶対的なパス 」 でないことを改めて思い知らされた。
そのうち 「 失業している人、リタイヤした老人などの永住権保持者は国に対する負担が大きいので国外退去になります 」 などとなってもおかしくない。
正直なところ、そこまで移民に厳しい態度を取らざるを得なくなった国の窮状を目にしたら、この国に滞在したいとは思わないだろうが。


そういう意味では今回の移民法案改正について関心を抱いているのは、アメリカ人 ( 元は移民 ) や不法移民、それに永住権保持者など全員で、それぞれ異なる視点から行方を注視しているのだ。
果たして移民法改正は厳しい下院案か、それとも優遇措置を取る上院案になるか・・・

けれどもどちらにも共通して感じることがある。
下院案はもちろんのこと、上院案も今回を特別なケースとして許可するが、今後は移民を制限していく方針を取ろうとしているように見える。

今のアメリカは世界で大きな影響を持つようになっているが、( Native American のコミュニティをのぞき ) 数百年前は存在しなかった国なのである。
いまそのアメリカが、かつて大きく開いていた移民への門を閉じようとしている。


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カナダ・トロント大図鑑 - カナダの労働ビザ (2006年5月 9日 07:44)

カナダの労働ビザカナダの労働ビザ取得のステップ 続きを読む

コメント(7)

私の住んでいる国を含む周辺地域では、ここで生まれ育ったにもかかわらず、政治的な理由から国籍を剥奪された人たちがいます。

常日頃からこの国で暮らし続けたいと口にしながらも、心のどこかでは、それが儚い夢のようなものであると覚めた目で見つめている自分がいるのは、ビザや国籍というものが、所詮は人の作った決まりごとでしかなく、いつそれが表情を変えるか分からないことを肌で感じているからかもしれません。

グリーンカードの制度が無くなってしまうと、移住したいと思っている私には非常に厳しいものとなってしまいます。。。
何故、今になってこんなに厳しくなったのでしょう?

勉強になりました。
いままで「なんか変わるらしい」ぐらいしか知らなかったので。
この法律は多くの人間の人生を変えてしまうでしょう。
ぜひ議員さんたちには、その人間たちを単なる数字ではなく、家族がいて、友人がいて、夢がある「誰か」だということを十分認識していて欲しいものです。

お隣の国に住んでいてもその変化を感じてきます。
僕は、カナダの永住権ですがカナダも入国に対する考え方が流動的で規則は、多々変わります。でもそれは、僕達のように異国の地からきた者だから敏感に感じていますが、ここで育った方々には、あまり敏感で感じられなかったり逆に彼らの足元をすくってしまう恐れのある環境下の彼らには、僕らのような異国民は脅威なんですよね・・・。
それから、場合によっては、異国からの人の流れで治安も悪化していきますし・・・、とても難しい話ですね。
何人か僕の友達もカナダからアメリカへ行きましたが、将来を心配しています。僕は、ただ応援するだけですが・・・

TAKE Cさん、
生まれ育った人の国籍を剥奪・・・。実はアメリカもそう遠い未来の話ではなくなりそうです。
アメリカでは出生地主義の国籍法に則っていて、たとえ両親が米国市民でなくてもアメリカで生まれた子供は自動的に国籍を有することができます。似たような主義を取っているのはカナダやブラジルがありますね。
ところが最近の移民法改正ではこの点も論点になっています。主義を変更するには憲法を改正しなくてはりませんが、憲法の解釈の違いを理由に、この出生地主義を制限すべきであるという動きがあります。
>ビザや国籍というものが、所詮は人の作った決まりごとでしかなく、いつそれが表情を変えるか分からないことを肌で感じているからかもしれません。
大いに同意します。テクノロジーや情報伝達がかつてないほど発達しましたが、その一方で人の生活を楽にするはずが逆に不自由で人の行き来が不自由な時代になってきましたね。

eccoさん、
>グリーンカードの制度が無くなってしまうと
グリーンカードの制度がすぐになることはないでしょう。ただ取りにくくなること、また持っていてもその権利を使用しない人(永住権を持ちながらアメリカに長期滞在をしない人など)や軽犯罪を犯した人は取り上げられる傾向に向かうと思われます。
厳しくなった理由はもちろん、テロが直接の理由ですが実際には失業問題、医療費、福祉費など経済的な事情も大きいと思われます。

シズカさん、
移民に関して、Native Americanをのぞけば皆移民の家系にたどり着くし、それも数代前の先祖ぐらいが移民として来たのにそのことは棚にあげて「いま」の移民問題だけ取り上げてもちゃんちゃらおかしいですね。
でも日本も同じように移民に対しては厳しい態度で臨む国なんですよね。アメリカに対して僕らの移民問題の要望をあげるだけでなく、日本に入国しようとしている外国人をサポートするのも日本人の役目かもしれません。


H.Oさん、
カナダとアメリカはその関係が近いので、ビザの発行などは他の国に比べると緩やかなのではないでしょうか?
(不確かです)
移民問題について考えるとき、自分が移民であるからこそ、確かにその国の市民がどう考えるかは重要ですね。
カナダからアメリカに移り住む人がいる一方で、アメリカからカナダに引っ越しする人も結構いるようですよ。
システムを整備して、もっと自由に外国に住めるようになるといいですよね。そのためには個人の管理が厳しくなるのは仕方ないのでしょうか・・・・?

こんばんは!
>ビザの発行などは他の国に比べると緩やかなのではないでしょうか?
勿論業種にもよりますが、一般的に厳しいですね。ビザの種類にもよりますが・・・

>アメリカからカナダに引っ越しする人も結構いるようですよ。
そうなんですよね、僕の知人にもいますしよく話を聞きます。それぞれの価値観ですよね(^^)

H.Oさん、
てっきりNAFTAがらみで米加間は割と自由に働くことができるものだと思ってました。

アメリカからカナダに引っ越す人の中にはもちろん自然が好きだとかライフスタイルの変化を求めてというのもありますが、政治信条の違いから・・という人も少なくないようです。

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このページは、hiroが2006年4月 8日 02:04に書いたブログ記事です。

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