2006年4月アーカイブ

里の春

| コメント(9) | トラックバック(0)


▲ NY から車で二時間、里の春らしい風景が広がる。


New York のイメージといえば真っ先に浮かぶのが大都会、Manhattan だろう。だから 「 初めて New York に来た 」 という人から Manhattan 観光の案内を頼まれるのには慣れている。

けれども東京に住んでいる人が週末を利用して郊外に抜け出すように、ここに住んでいるとときどき無性に都会の喧噪から離れたくなることがある。
驚くことに Manhattan から車に乗ってちょっと走るだけで、そこにはのどかな田園風景や険しい峡谷など自然の景色が手つかずのまま残っているところに出くわす。

都心に住んでいると地下鉄など公共機関が整っているおかげで自家用車を持つ必要が無いと言うことが多い。NYC に住んでいる人の多くがこれに当てはまる。
それでも日本では週末に郊外に行くときに鉄道やツアーバスに乗って、気軽に日帰り行楽ができるのだが、鉄道システムが崩壊してしまったアメリカでは、その手段はほとんど無い。都市と都市を結ぶ鉄道はあっても、残念ながら郊外に向かう路線が存在しない。
そのため、NYC 近郊に限って言えば、シーズン中に名勝地に行っても、めったには駐車場待ちで行列・・・というシーンに遭遇しないのだ。NYC に住んでいる人口を考えるとこれはかなり少ないといえる。


ということで以前から郊外に出かけることはよくあったが、写真を撮るようになってさらに郊外に行くのが楽しくなった。
皮肉なことに写真を撮影する機会が増えれば増えるほど Manhattan で撮ることが多くなり、郊外に行く時間がなかなか取れなくなった。どうしてもまとまった時間がないと行けないからである。特に冬は、いま乗っている車で雪道を走るのは難しいのでほとんど出かけじまいとなった。

やっと春が来た、と思っていたところに日本から来た知人から 「 郊外に行ってみたい 」 と言われ、用事があるなどというわけがない ( 笑 ) 。
Manhattan の遅めの桜が散る頃、向かったのは Delaware Water Gap ( 通称 DWG )。New Jersey 州と Pennsylvania 州の境にあり、New York からは西の方角にある。
ここには去年の秋に初めてやってきたのだが、そのときの様子をブログでも紹介したので覚えている人もいるかもしれない。

Manhattan の桜を横目に出発したので、いくら郊外といえどもそれほど時期的に変わらぬ景色が見られるだろうと思っていたのだが、車窓に流れる風景はみるみる変わり、それはまだ春が訪れる直前の景色まで季節が戻っていった。それはまるでビデオテープを巻き戻ししながら見ているかのようである。
Manhattan を出ておよそ2時間後、僕らの前に広がっていたのは冬から春にちょうど変わろうとしている山の装いで、新緑もまだまばらである。


▲ 上の写真とだいたい同じところから、去年の11月に撮った写真。


去年来たときと同じハイキングコースを選んで、今年もカメラ一つと弁当を持って登る。去年は途中登山コースから外れてしまい、かなり遠回りしたが、今年はそのときの教訓から迷うことなく View Point に到着。
まだ寒々しい風景が広がっているが、日中は暑くなり、登り切ったところでは T シャツ一枚でちょうど良いほどの気温であった。

ここに来ると2時間しか離れていない New York とはもっと長い時間 - どちらかというと何年も離れているかのような錯覚に陥るほど別世界が眼下に広がる。この山は実は長い山脈の一部で、ハイキングコースが無数にあることを後から知った。
それと今回初めて知ったのが、その山脈とはアパラチア山脈だということだった。確か中学か高校の地理でこの地名が出てきたのを覚えているが、アパラチア山脈がどこにあるかなんてことは興味がなく、僕の中では名前と風景が一致してなかったのだが、この風景を見たときに missing していたものが全てリンクした。


結局ドライブした2時間という 「 とき 」 は、早足で通り過ぎる Manhattan の春からちょっとばかり時間を遡り、その風景は2時間どころかもっと離れた距離を感じさせ、そして何十年も前の自分の記憶の糸をたぐい寄せるのだった。
都会と日常から離れるということは、こんな風にちょっとしたタイムスリップ感をも僕らに与えてくれるのである。



▲ 今回初めて行った山奥の滝。近くで見ると落差もかなりあって迫力もかなりのもの。雪解け水のせいで水量が多いのだろうか。

もうだいぶ前に陽は落ちてしまったけれど、空は僕らの気持ちを察してか、あたりをぼんやりと照らしてくれる。もう少しだけ休日のこの時間を過ごしたいんだ。


「 そろそろうちに帰ろうか 」

New York の公園で見かけたチッチとサリーはそんな会話をしているのだろうか、彼女はベンチの腰掛けから大きな彼の背中によじ登った。




※ 公園で見かけた風景をこっそり撮っているように見せているけれど、実は二人とも友人です。
でもやらせでもありません(笑)

050410-195432.jpg
▲ Canon EOS 20D

ここ数日の New York は雨続きということもあって自宅でこつこつと打ち込んでいたのが、ブログシステム、Movable Type のバージョンアップ作業。
といっても Movable Type を自前でインストールして、自前のブログシステムを使用しない人にとっては全く関係ない話なのだが、これも今後バージョンアップする際の僕自身のメモとして書き記しておくことにした。

New York Watch もすでにエントリー数が700を超え、最初の頃は感じなかった不満点が出てきた。
その最たるものが速度で、僕がエントリーを書いてパブリッシュすると数十秒かかることも珍しくなくなった。僕のブログを読んでくれる人もコメントを書いて送信すると、ネットワークコネクションがとぎれてしまったんじゃないかと思うくらい時間がかかるようになったのでご存じのことだろう。
というのもコメントでもエントリーでもちょっと更新しようと思うと、データベースを更新した後でインデックスページやら個々のエントリーやらいくつもの html ファイルを作りあげたり更新するために非常に時間がかかるようになったのだ ( つまり毎回静的にファイルを生成しており、その度に700を超えるエントリー分のデータベースにアクセスする必要があった )。

もちろん Movable Type ではそのことも考慮して、ファイルを動的に生成させる仕組みも用意されている。つまりエントリーを登録したり、コメントが追加されたときにもデータベースに保存するだけでファイルを生成しないことで更新にかかる時間を短縮するわけだ。その代わりウェブサイトがアクセスされるとその度に表示するための html を生成することになるため、サーバに対する負担は高くなる。けれどもインデックスファイルなど頻繁にアクセスされるファイルは静的に作成しておくことで、バランスを取ることができる。

幸いこの機能は僕が使用していたバージョンでも使えるということだったので試してみたのだが、それほど目に見えて速いというほどパフォーマンスが向上することもなく、加えてコメントが新しいものから旧いものへの順番でしか表示できないなど不具合も報告されていた。
調べてみると最新のバージョンである 3.2 では不具合も修正されているということがわかり、それならばとシステムを入れ替えることにした。

それまで使用していたデータベースをエクスポートし、新しくインストールした Movable Type にインポートしてやれば移行作業自体は終わりなのでそれほど手間はかからない。以前にもやっているのでだいたい手順も覚えている。
けれどもそこから面倒なのはインストールしたプラグインソフトやら僕が改造したスクリプトの移行である。新旧 Movable Type の仕様の違いからそれまで動いていた機能が動かなくなったりするのだ。それらをいちいち手動で修正し、テストを繰り返していたらあっという間に数日かかってしまった。

具体的に機能追加や改造をしているのは、サイドバーのカレンダー表示、アクセスカウンター追加、最近のコメントのツリー表示、最新のトラックバック表示などであり、またリストをツリー上に表示するためのプラグインもインストールされている。そのほかにもスタイルシートを大幅に書き換え、表示されるフォントやレイアウトもオリジナルとはだいぶ異なっている。
スタイルシートは特にバージョン間で大きく変更されているために、画面のマージンやパディングの値を変えるたびに、画面で確認するなどだいぶ手間がかかった部分である。

それまではテンポラリの URL でテストをしていたのだがどうやらほとんど以前のものと変わらぬ見栄えになったことから、これまで使っている New York Watch と同じ場所にブログが展開されるように設定を変え、再構築。これで移行は完了である。
もし 「 以前と変わったことに気がつかなかった 」 と言う人がいればそれはうまくスムーズに移行が完了した、ということであるがよくアクセスしてくれている人だったらちょっとした違いに気がついたかもしれない。
たとえばエントリーの中で 「 以前にここで紹介した 」 などという記述があり、そのブログエントリーへのリンクがあるのだがこれをクリックすると、以前静的に生成された html ファイルへジャンプする。ところがスタイルシートの互換性が無いために、旧い html ファイルは画面が乱れて見える ( フォントサイズの指定も違っている )。
せっかく動的にファイルが生成される方法を選んだのだから、過去の html ファイルを削除してしまえばいいのに、と言われるかもしれない。実は今回からファイルの拡張子も php 化のために html から php に変えている。そのため新しいファイルではリンク先の拡張子も php になっていないと正しい画面が表示されない。つまり各エントリーの中で過去のエントリーへリンクしている場合に、html と記述されている箇所をを全て php に変えてサイトをリビルドさせなくてはいけないのだ。
実はこれはかなり大変な作業である。いったいどのエントリーが他のエントリーへリンクを張っているかを調べる手段は用意されていないから、一つずつ目視で確認しなくてはならない。それと簡単に html を消せない事情は、サーチエンジンが覚えているリンク情報のこともある。
サーチエンジンがヒットしたキーワードに基づいてエントリーを表示させようと思ってもすでに html から php へファイル名が変わっているために、「 Not found 」 というエラーが表示されることになるのである。
困ったな、と思って google で探してみるとやはり同じような問題に遭遇した人がいて、すでに解決策が取り上げられていた。
具体的にはスクリプトを一本用意して、.htaccess というアクセス制御のファイルに html から php へ自動的にリダイレクトするよう、書き加えるのである。
今回そこまでテストする時間がなかったため、その機能追加は後回しにすることにした。それで過去のエントリーへのリンクをたどると画面レイアウトが崩れて見えるのである。これは時間があるときに対処することにしよう。
あとは小さな事だが、個々のエントリーを表示させるとこれまで表示されていた 「 そのブログエントリーが投稿された日時 」 タイトルバーが表示されなくなった。
どうやら 個別アーカイブで MTEntries を使わない方法に書き換えられたため、そのタグの中でしか使用できなかった MTDateHeader が使えなくなってしまったのだ。そのせいでバナーと本文がつながっているようで、間延びしているように見える。これについても時間があるときにテンプレート書き換えに再挑戦してみることにしよう。

さてつらつらと書いてきたが、移行作業が終わり、早速コメントの投稿テストをしてみたところ、どうやら少しばかり速くなった気がする。何より動的ファイル生成にしたことでサーバ上の使用ファイルサイズも減ることとなった。しばらくは旧バージョンが生成した html ファイルも残存するが、いずれこれも不要になるので、さらにサーバ使用量は少なくなりそうで、良かった良かった。

050410-195338.jpg
▲ Canon EOS 20D

さて明日からは通常に戻り、これまで通りのブログを書くことにしよう。皆さん、これからも New York Watch をどうぞよろしく。

ブログ移行中

| コメント(5) | トラックバック(0)

cafecito.jpg
▲ EOS 20D : East Village、Alphabet Avenue のキューバレストランにて。一休み。

そもそも不定期更新なブログなので、いまさら報告というのもおかしいが、今日、明日・・・とブログの更新を休む予定。
詳しく書くとカテゴリー 「 Movable Type 」 に登録しなくてはいけなくなってしまうが、僕が使っている Movable Type のバージョンが古くなりつつあり、パフォーマンスアップなどのワザを使おうにもこのバージョンではできることに限界があるようなので、思い切って新しいバージョンに入れ替えることにした。
そのまま既存の Movable Type からアップグレードさせることもできたのだが、万一データベースが破損するようなことがあれば面倒なのと、移行中の試行錯誤の画面が現れることになるので、今回は新規にインストールし、データベースだけインポートすることにした。

今夜はとりあえずここまでにして、明日からプラグインソフトウェアの移行などカスタマイズに取りかかる予定。

新バージョンで、コメント投稿時の待ち時間が短くなるといいのだが、なにせエントリーが700を超えたためだんだん重くなってきている。

ということでこちらにコメントをいただいたものも、新しいブログに移行させるので気軽に残していってください。

Sidewalk物語

| コメント(4) | トラックバック(0)

love.jpg

今日、East Village で見かけた二人。
ちょっとワケありの二人。

Sidewalk の物語。

Happy Easter!

| コメント(11) | トラックバック(0)

easter.jpg

日曜日の今日は、Easter である。
一般に復活祭と訳されて日本にいたときも何度か耳にしたことがあったが、この日のことを身近に感じたのはやはりアメリカに住んでからだろう。
キリスト教における祝いの日であるが、同じ頃ユダヤ教も過越しの祭りといってやはり祝日となっている。
民間企業は通常業務を執り行うが、公立学校などはこの前後、一週間ほど休みになるためちょっとした春休みになる。
その一方、過越しの祭に併せて長いこと店を休むユダヤ系の店は多い。

この Easter、シンボルといえばうさぎとカラフルな卵 ( これをイースターエッグと呼ぶ ) である。
バレンタイン、ハロウィン、クリスマスなどのときに小売店のショウウィンドウが祝日にあわせたデコレーションをするように、この時期にどのショウウィンドウもうさぎと色つき卵が飾られるのはそんなわけである。
チョコレート会社もこれに併せて卵形のチョコレートを販売するくらいだから、それなりに大きな祭りなのである。

長いことここに住んでいるうちに、僕もこの時期、ピンクだのパープルだのといった卵を見るたびに春の風物詩として感じるようになってきた。
事実、この週末は今年一番の陽気となって、まるで Easter が春を運んできたかのようだった。


その陽気に誘われてカメラを持って出かけた、Downtown。
子供たちがイースターエッグを探すように、僕も春を探すと、あったあった。公園の桜はすっかり満開となり、チューリップも赤や黄色といった鮮やかな色で春に華を添えているのだった。

街を歩いていてうっすらと汗をかいたが、それはまさに半年ぶりである。長い冬があけて NY に春と夏が同時にやってきたのだろうか。
僕からも皆さんにNew York の春到来の報告を兼ねて、「 Happy Easter ! 」

easter2.jpg

easter3.jpg

孤独な地下鉄

| コメント(6) | トラックバック(0)

subway.jpg


不夜城のごとき New York においてまるで都市の血管のように脈々とつながり、止まることなく常に走り続ける地下鉄。
たくさんの人が同時に乗り込み、都心のターミナルで一気に吐き出される。例外なく誰もが目的地へと急ぐ人たちである。運転士すら交代のたびに乗っては降り、そこにとどまる人などいないかのようだ。

昨日、ローカル新聞の片隅に小さなニュースが載っていた。
それは24時間眠らない New York の地下鉄でのでき事だった。

地下鉄 N 線が終点の Coney Island に着いたのに一人だけ降りない客がいた。夜中の2時になろうとしていたときだ。不審に思った警官が問いかけると、その50代の乗客はすでに息を引き取っていた。地下鉄の中で静かに迎えた孤独な死だった。
現在までのところ彼がどのくらいの間地下鉄に乗っていたのかわかっておらず、さらに悲しいことにまだ身元がわかっていない。
彼は死ぬときも孤独だったが、生前も誰にも知られない存在だったのかもしれない。


都会でそんな偶然が・・・と思うかもしれないが、実はそう偶然ではない。
今年の一月にも郵便局員が地下鉄の中で座ったまま亡くなっているのが発見された。朝のラッシュアワーまでの間6時間、彼はずっとそこに座っていたのに、Manhattan の人たちは誰も気がつかなかった。皆 iPod や新聞や車内の広告に夢中だった。僕だって身じろぎ一つしない人を寝ている人と片付けて、目の前にいても気がつかないかもしれない。


subway2.jpg


この悲しいニュースはこうして一部の人たちに知られることとなった。けれどもきっとすぐに忘れ去られてしまうだろう。
New York とはそういう一面を持っている街なのだ。


三面記事

Newsdayの新聞記事
http://www.newsday.com/news/local/wire/ny-bc-ny--deadpassenger0413apr13,0,5254600.story

New York City
--------------------------------------------------------------------------------

Man found dead on the 'N' train


THE ASSOCIATED PRESS

April 13, 2006, 1:50 PM EDT


A man who remained in his seat after his subway train pulled into the last stop in Coney Island on Thursday was found to be dead, police said.

The man, whose name was not immediately known but was described by police as in his 50s, was found sitting in the front car of an "N" train at 1:55 a.m.

When police checked to see why the man wasn't getting off at the Surf and Stillwell avenues station, they discovered that he was dead. The man did not appear to have any injuries, police said.

It was not immediately known how long the man had been dead before police found him.

In January, a postal worker was found dead on a subway car near the start of the morning rush hour, his lifeless body possibly riding the train for about six hours. The man was discovered Jan. 19 in the last car of a northbound Q train in the 14th Street-Union Square station. Authorities reported there were no signs of foul play or any injuries.

In June 1999, a passenger on a No. 1 train shared his ride with commuters for about five hours before anyone noticed he was dead. The man appeared to be sleeping, with his eyes closed and his head bowed.

The medical examiner's office did not immediately return a call for comment.

境界

| コメント(2) | トラックバック(0)

paperwall.jpg

下を向いて歩いてるだけなのだが、その姿はどこか彼がこうべを垂れているようにも見える。そしてその方向にはけばけばしい商業主義だらけのポスターたち。
皮肉にも赤い星印が中国を象徴しているかのようだ。

China Town にて。

napoli2.jpg

New York の人はホントにピザが好きなようで、それを証明するかのように街のあちこちにピザ屋を見つけることができる。
ピザの一切れはちょっとおなかが空いたときのスナックとしてちょうどいいサイズなのかもしれないが、そうやって一枚だけ頼んでいる人も多く見かける。今朝も信号待ちをしている隣の車を何気なく見ると、運転しながらピザを食べている人がいたが、それはさすがにマレかもしれない。

僕の住居からすぐ角を曲がったところに小さなイタリアンレストランがある。レストランというよりその規模から言えば食堂といった方がお似合いである。
この店は半地下にあって首より上の高さに窓が二つばかり着いてる。その半地下のスペースにはテーブルが十卓あるかどうかで、こぢんまりとした食堂である。

入ってすぐの3畳くらいのスペースはテイクアウトをオーダーする場所になっている。その奥にテーブル席があるのだが、あまりにも小さいのでたいてい一人のイタリア人女性がまかないをしているだけだ。

僕は一度もイタリアに行ったことがないのだが、以前このブログで紹介した、作家・エッセイスト・評論家である須賀敦子さんの著書を通じて、ガイドブックよりもずっとビジュアルなイメージが僕の頭の中にある。
行ったこともないくせに、こんなことを言うのは危険かもしれないが、僕の中ではこの食堂の雰囲気と須賀氏が言葉で描くイタリアの風景とつながっているのである。
ここが Queens にある半地下のレストランなのに、である。
それはミートボールにかけられたトマトソースに感じる甘みから、太陽を感じるのと同じ事かもしれない。

けれども今回紹介している写真はどう見てもファンシーなイタメシレストランの盛りつけにはかなわず、そうおいしそうに見えない。

napoli3.jpg

料理がおいしそうに見えないのは、十分な明るさが無かったからだとか、頭上のライトのせいで自分の頭で陰ができてしまうという言い訳でごまかす僕の腕もあるのだが、理由はそれだけじゃくて料理のスタイルそのものにありそうだ。

ではこの食堂のメニューはまずいのか、というそうではない。実のところ、ここの料理はおいしい、というよりはうまいのである。
味の違いを言葉で表すのは難しいのだけれど、ここの料理は 「 まったり 」 とか 「 まろやか 」 とか 「 食材のハーモニー 」 というおいしさの代わりにに、ふとっちょのイタリア人お母さんが煮込んで作った家庭の味、のようなガンとくるうまさなのである。
洗練というよりはストレートな味、繊細というよりはおおらかな田舎風味というのがあっているかもしれない。


そんなわけで、この小さな食堂はいつ行っても客でいっぱいなのである。
本来は制服のまま食事をすることなどしない NYPD のお巡りさんも、ここではよく見かける。見かけるどころかいつも表にはパトカーが止まっていてテイクアウトのピザがオーブンから出てくるのをいまかいまかと待っている警官をいつも見かけるのだ。

取り立てて名所があるわけでもない小さな街の小さな食堂。でもこんな店一つ一つのおかげで街が、魅力的に見えるんだと思う。


napoli1.jpg

いつものようにたらふく食べて、店を出ると、オーブン前のシェフが 「 チャオ 」 と挨拶してくれた。
僕も気取ってイタリア語で返したいところだが、残念ながらそれはまだかなわない。

mta49thst.jpg

地下鉄 N ライン、49th Street 駅、23時。
公衆電話はここでいろいろな言葉を伝えてきたはずだ。
今夜はどんなドラマがここから始まるのだろうか。

カレンダー

<  2006年4月  >
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

このアーカイブについて

このページには、2006年4月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2006年3月です。

次のアーカイブは2006年5月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ

OpenID対応しています OpenIDについて
Powered by Movable Type 4.21-ja