蛍とワインとChe Guevaraの夜

| コメント(11) | トラックバック(0)

「 炎暑のNY 」 で紹介した、Astoria の野外映画祭だが、このところ自宅の A/C の調子が悪くテクニシャンが見に来てくれるという申し出にだいぶ迷ったものの、日にちずをずらしてもらうことにして、映画祭の方に行くことにした。エアコンの修理はいつでもできるが、この映画祭は毎週水曜日にそれぞれ異なる映画を上映するので見逃してしまうとそれっきりなのである。

主催者のウェブサイトによると、交通機関で行く場合は、地下鉄 N ライン、Broadway 駅が最寄り駅となっている。
僕はこの街に住んでいるのでおよその距離を知っているが、その駅から East River 沿いまで歩くのはかなりの距離である。正確に数えてはないが、15ブロックぐらいはあるんじゃないだろうか。Manhattan で15ブロックといえば、両脇の店を見ながら歩けばあっという間だが、こういう住宅地の15ブロックは距離は同じでも不思議なことに延々と続くように感じるものである。

それでも映画の上映開始は 「 日が落ちた時 」 となっていたのでゆっくり歩いて8:30 PM に着けば良いだろうと思っていたところ、この日同行した友人は、「 早く行かないと席が取れなくなるかも。それに映画の前、7時からもなんかイベントがあるみたいだし 」 というので、帰宅早々簡単に着替えて車で出かけることにした。
幸いなことに、隣にある Costco の駐車場が無料で開放されるとホームページに書いてあったので、駐車スポットを探す手間は省けそうだ。ちなみに Costco はこのイベントのスポンサーとして名前を連ねているので、こんな形でも協力しているのだろう。

道すがら・・・というほどの距離でもないのだが、Astoria の日系コンビニストアで弁当とお茶を買い、Manhattan から来た友達ここでピックアップし、会場に向かう。

Costco の駐車場は夕方の食料品買い出しの人たちでにぎわっていたがそれは店に近いところだけで、映画祭が開かれる会場側はがらがらだったので、ここを利用できることを知っている人は少ないようだ。

会場となっているこの公園は、ソクラテス彫刻公園・・と呼ばれているが箱根の森彫刻美術館なんかを想像していくとその規模の小ささにびっくりするかも知れない。芝生の広場にぽつんぽつんと所々に作品が展示されているのだが、今夜のように人がたくさん来なければかなり寂しい風景に違いない。
その芝生の広場の一番奥に NY 市公園管理局が所有するトラックが止まっており、そこにお世辞にも大きいとは言えないスクリーンがかかっていた。


僕らが着いたのは7:30PM ごろだったのでまだ外も明るく、まだ映画を上映するには早すぎる時間帯だったが、そのスクリーンの横にはドラムを携えた男性のグルーブが数人と、これまた派手な格好をした女性が数人踊っていた。
一体なんのイベントだろうとしばらく見ていると、それはブラジルのサンバであることがわかった。ただしそこでまた 「 なんでサンバ? 」 と新たな謎に頭を抱えることになったが、その答えは割とすぐに見つかった。
今夜上映が予定されている映画の監督がブラジル人だったのである。
ちなみに会場では地元のレストランが屋台を出店する、とホームページに書かれていたがこの日出店していた店は一軒だけで、その一軒もブラジルレストランだった ( ちなみにこのブラジルレストランは僕の住んでいるすぐ近くにあって、なかなかお勧め )。
毎週行われるこの映画祭は、来週はイタリア映画、次はルーマニア映画・・となっているのでそのたびにその国のレストランが出店するのだろうか。

屋台の弁当を見て思い出したように僕も弁当を食べようと、適当に空いている場所に陣取る事にした。幸い車のトランクにレジャーシートが入れっぱなしになっていたので、それを持ってきて広げることにしたのだが、これが無いと前日に降った雨のせいで土は湿っており、おしりは濡れてしまいそうだ。周りを見渡すとどちらかというと折りたたみ椅子を持ってきている人が多い。あとでわかったのだが、こういうイベントはレジャーシートよりこういった椅子の方が疲れなくてよい。また目の前の人が椅子に座っているとこちらはキリンのように思いっきり首を伸ばさなくてはならないから、ますます疲れる。



そうこうしているうちにサンバのパフォーマンスは終わり、映画は8:30 PM からの上映だとアナウンスが入る。
8:30 というとまだ明るいのだが、場所が場所だけにあまり遅くまで大音量でスピーカーから音を出すわけには行かないだろうし、協力してくれている Costco も深夜まで駐車場を開放できないという事情があるのだろう。
とはいえ上映まであと30分ほど。持ってきた食料を食べていればすぐである。
周りのグループも思い思いにバスケットやらクーラーボックスを持参して、それこそサンドイッチやらタコス、それに途中で買ってきたピザを食べている。しかも公園でありながらプライベートなイベントだからなのか、ほとんどのグループがワインとグラスを持参していて、どうやらほろ酔い気分で映画を見ようという魂胆らしい。こんなこと、映画館ではできないから、野外映画祭の醍醐味の一つである。


そしていよいよ8:30になった。
やぐらが組まれたその上に大きなプロジェクタが設置され、係の女性が画像のチューニングをしているのだがスクリーンに映し出された画面は Mac OS Xだった。どうやら映画は Mac 上で DVD 再生するようだ。
そしてチューニングが終わると、なんの予告もなく突然のように映画の上映が始まった。


今夜の上映される映画のタイトルは 「 Motorcycle Diaries 」 といって、キューバの革命士として今なお人気が高い、チェ・ゲバラの若き日を描いたストーリーである。
アルゼンチンを出発して、バイクで南米を旅をする。とても淡々と物語は進むが時折破天荒な行動に出るのはそれは若さ故か、それともそういう時代だったのか、さてはてラテンの血がなせるわざか、いずれにせようらやましくさえ思える。
そうしていろいろな旅を通していろいろな人たちと出会ううちに、おそらく革命に対する意志が芽生えたのだろう。

映画そのものの批評は、僕の得意とするところではないのでここでは書かないが、個人的にはちょっと長いかなと思いつつも見終わったときは満足感があった。
長いな、と思ったのはおそらく野外で見ていておしりが痛くなったからではないかと思うのだが。

映画の中で面白いなと思うシーンがあった。この映画はスペイン語で話され、英語の字幕が表示されていたのだが、一部字幕が表示されないシーンがあった。
それはペルーのマチュピチュだったかリマのどちらかだったと思うが、現地の人たちと車座になってチェ・ゲバラ ( 当時はまだエルネストと呼ばれていたが ) が葉っぱをカムシーンである。
おそらくはこれはコカの葉なのだろう。よく知られているとおりこれから麻薬のコカインが作られるので、字幕で表示することは許可されなかったのかと思われる。
英語の字幕が表示されるより先に、スペイン語の会話が聞こえてくるところでたくさんの観客が笑い声をあげていたので、この日はスペイン語を理解できる人が多かったようだが、そういう人たちはオリジナルの音声でこの部分を理解できたに違いない。、


僕はこれまでにも Bryant Park の映画祭に行ったことがあるがこちらは人が多すぎる上、周りの人の会話がうるさすぎて映画の内容を何一つも理解できなかったのだが、それに比べるとこちらはゆっくり楽しむことができた。ときおりパトカーがサイレンをけたたましく鳴らして通り過ぎたりするものの、それはレジデンスエリアならではの街の騒音である。
パトカーのサイレンのほかにもう一つ、僕らの気をそらすものがあった。
それは蛍である。

ちょうど映画の上映が始まった頃、夜のとばりが降りてきて、これでやっと字幕が読みやすくなるぞというころになってあちこちでふわ、ふわっと光っては消える蛍が飛んでいた。こんなイベントでもなければきっと都会の蛍には気がつかなかったかも知れない。
New York では金を払えば豪華な夜はいくらでも過ごせるが、逆に1セントもかけずに豊かな時間を過ごすこともできる。いつも高いお金を払ってばかりいないで、たまにはこんなスローな夜を過ごしてみてはどうだろう。


タイトルには「蛍と・・・」などとかっこよく書いてみたものの、East River のすぐ横で開催されるせいか蛍だけでなく蚊もたくさんいる。
特にアルコールを飲むと体温が上がって刺されやすくなるので、虫除けスプレーを忘れずに。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.nomeri.com/mt421/mt-tb.cgi/774

コメント(11)

hiroさん、こんばんは。
この前の花火の時も感じましたが、NYの人たちって空間(場所)と時間の使い方がうまいですよね。
いろいろな場所で夏を楽しめるイベントが(無料で)あったり、
待っている間もただしゃべってるだけでなく、自分たちで椅子・テーブルを持ち込んでワインを飲んでたり、踊っていたり、スイカをみんなにおすそ分けしていたり・・・
目的のイベントだけでなく、それまでの「時間」を楽しんでいるみたい。
日本で働いていると、一見無駄に感じるそんな時間を楽しめる「心のゆとり」を忘れそうで。
ダメですね・・・

きれいな夕焼けですね。

tackさん、
日本もね、きっと納涼盆踊りとか花火ってそういう夏の楽しみ方の一つだと思うんです。
ただ「古い」とか「ださい」とかって高校生ぐらいになるとだんだん遠のきますよね。もっと老若男女が参加できるように形を変えながら続けていけばいいんじゃないかな、と思う。
NYにしろ、日本にしろこういうイベントを野外で行えば、自然と皆が外に出て家でエアコンを使う時間も減り、エアコンの廃熱によるヒートアイランド現象も抑えられるかも知れない。
そうそうオープンエアもいいよね。ちょっとぐらい暑くても、ランチやディナーは外で食べる方が美味しく感じるし。暑さに抵抗するんじゃなくて合わせれば良いんだと思う。

こんにちは。

「 Motorcycle Diaries 」 いいですよね。
トライアンフをダダダダ♪行って出発する様が印象的です。
あの映画は大好きですよ、そんな映画をこんなにもシュチュエーション満点な所で拝見できるとは。
いいですね!!羨ましいです。

僕もNY住みたいです。
ホンキで移住考えてるんで今度相談乗ってください!
お願いします。

ひろゆきさんが、観に行くと書かれていたのを読んだ後、その翌日だったか、偶然TVでやっていました!
残念ながら、Spanish チャンネルでの放送で、英語での字幕なし。なんにもなしで、ある程度わかる単語と、映像で、なんとなく理解しながら観ました。
でも、よかった!好きな映画かも、、。ちゃんとDVD借りてきて、英語の字幕つきでみたいなぁ、と思ってます。
ハンセン病患者たちと過ごすところも印象的でした。本当の患者さんたちが出てましたよね?
彼って医学生だったんですね。ビックリ~。
たしかに、下に座って観るには、長かったかな?

かおりさん、
バイクで南米を旅するシーンは特に野外で見ていて気持ち良かったですね。
日本もこういうイベントを、しかもやるなら大きな場所で一カ所ではなく、あちこちでいろいろなバリエーションのものをやったらいいと思いますね。
ビルの壁を使ってやってもいいし、代々木公園や新宿御苑とかあちこちの公園でやればいいですよね。
そのために近隣のビルはネオンを止めるなどの協力を頼めば使用電力も下がってなおさら○。
蛍は夏になると結構NYでも見られるのでそれほど珍しさを感じませんが、思い起こせば僕が東京にいたときは、ザリガニ釣りを楽しんだモノです。東京でザリガニ?と New York の人は逆に驚くかも知れませんね。

HALTACさん、
アルゼンチンの街を危なっかしく出発するシーンは、これから起こるだろう旅のハプニングをうまく予言してましたね。
NY在住、挑戦してみてください。挑戦しないで諦めるのはもったいないですよ!
協力できることがあればお手伝いしますから、質問などあればメールしてみてください。

yamajunさん、
最後に1人の老人が遠くを見つめるシーンがありますが、きっと彼がチェと一緒に旅をした年上の友人、アルベルトなんだろうなと思いました。
ハンセン病の人たちと心を通わすことで、病院の人たちの心もすぐにつかんでしまいましたが、思えば彼には人を引きつける魅力があったんでしょうね。それが彼に革命を駆り立てたのかもしれないし、人民がついてきたのかもしれません。
若くして亡くなった後も慕われている彼の魅力のいったんをかいま見た思いです。

HIROさん、ありがとうございます。
お言葉に甘えて近日中にメールさせて頂きます。

ネットで情報を集めても、
なんだか賛否両論で何が正しいのか誤っているのかがわかりません。
NYのリアルな情報を教えてもらいたいです。
すみませんが、よろしくお願いします!!!

HALTACさん、
海外生活について、僕自身明確なゴールを持って日本を出てきた訳ではなかったので、人にこうしろ、などとは口が裂けても言えませんが、海外に住むことへの興味があれば、滞在中に移住して何をしたいのかの目的を見つけることができるでしょう。
逆に目的がここには無い、という答えがでるかもかもしれません。それは住んでみて初めてわかることで、結果はどちらになったにせよ、その後の人生のプラスになるはずです。それが遠回りになったとしても、僕は新しいことに挑戦する意義はあったと思います。

ちょっと前にRoseというおばあさんの話を紹介しましたが、覚えています?
http://www.nomeri.com/newyorkwatch/archives/2005/07/040854.php

で紹介したんですが、彼女が言った「自分のやってきたことに対して後悔することはありません。むしろしてこなかったことに対して後悔しているものなのです。」という言葉に僕はいつも動かされている気がします。

無鉄砲で何でもできる時代ではなくなりつつあり、やはり何事も金銭的なことが絡みますから昔に比べれば準備が必要でしょうけれど、要は心構えだと思います。周りがとめても本人が行きたい、と思うくらいのほうが何かあっても強がりを言って出てきた手前、前に進むしかないでしょう(^。^)

こんにちは
「 Motorcycle Diaries 」私も以前観ました。
あの映画は映画館よりも、野外で観た方が合いそうですね。
ほんと、日本もこういうイベントもっとやってくれたらいいのにと思います。
たまに高島屋の屋上でやってるみたいなのですが、芝生の上っていうのは理想ですよね。

それにしても、蛍が見られるなんでびっくり!
実は私は蛍を今まで見たことがないので、NYでも見られることに驚きました。

チェ・ゲバラの生き方やNY市民の夏の過ごし方、それにHALTACさんへコメントする
HIROさんの考え方が心にストンと落ちました。
それに映画上映中の背景が独立記念の花火を待つあのワクワク感を彷彿させてくれます。

夏だから・・・ではないのですが人の人生は長い長い歴史からしたら一発花火みたいなもの。
不発に終わらぬよう、大空目掛けて進みたいです。

あ、そんなこと言いながらNYへの足がかりはまだまだ皆無なのですけど。
私事ですが、今度は横浜から藤沢へ異動になりました~。残念。NYじゃないですね。
今の店舗より自分が実現させたい要素が詰まった店舗なのでそれはそれで楽しみです。

HIROさん、ありがとうございます。

なんだか、いままでの凝り固まった思考が気持ちよく溶けて新鮮な気持ちになりました。Roseおばあさんの言葉にのっとって頑張ります。目標はでかい方がいい、海外移住なんてぜんぜん意識していませんでしたが夢が実行へと移されるわくわくした気分でなんだか心地良いです。僕なりに調べられることは自分で調べます、どうしてもわからない時はHIROさんにメールしようと思います。すみませんがよろしくです。

自分改革、啓発。

かおりさん、
間違ってコメントを削除してしまったので、バックアップからもとに戻したんですが投稿時間がずれてしまいました。
あしからず。コメントは上にあります。

かじゅうさん、
おりしもキューバのカストロ議長の体調が思わしくないようですね。キューバを訪ねるなら彼が政権を握っている間のほうが安全だ、と言われています。
行ってみたい国の一つなので、焦ります。
>夏だから・・・ではないのですが人の人生は長い長い歴史からしたら一発花火みたいなもの。
そう、だから夢は夢で終わらせず、追求して初めて夢となるんだと思いますよ。
チェ・ゲバラなど、僕の年齢より早くして亡くなりましたが、こうして歴史に残ることになりました。人生とか旅ってなんだろうといつも考えさせられます。
日本に行ったら藤沢店に顔を出させていただきます。従業員割引、お願いしますm(__)m

HALTACさん、
>海外移住なんてぜんぜん意識していませんでしたが夢が実行へと移されるわくわくした気分でなんだか心地良いです。
無責任な言い方ですが、挑戦してみて、失うモノがあるかと自問してみると、人間なんにも持っていないんだ、と気がつかされます。逆に変化を起こさなければ平穏で、周りの人もなにかあったらサポートしてくれるかというとそうでもありません。所詮自分の人生は自分で選んで、自分で責任を取るものなのだから。
養う家族がいるときは自分だけの夢を追求するのはできませんが、それでも家族の夢を追求することはできますよね。

コメントする

カレンダー

<  2006年7月  >
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

このブログ記事について

このページは、hiroが2006年7月25日 19:25に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「少年の夢、はばたく」です。

次のブログ記事は「飛行機と三脚」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ

OpenID対応しています OpenIDについて
Powered by Movable Type 4.21-ja