( 『Atlanta紀行』と題して先月下旬に訪れた Atlanta の写真と文を紹介しています )

今回、Atlanta を皮切りにして、Detroit そして Chicago と続けて訪れたのだが、Atlanta は他の二都市、いや New York、それに僕がこれまでに訪れたことのある都市を加えても、ちょっとした特色があった。
それはとにかくよく声をかけてくる、ということである。
日本からアメリカに初めて旅行で来たときやこちらに住みはじめた当初、僕もそのことをあちこちで経験した。といってもそのころは会話に追いつくのに必死で、きっと見知らぬ人に対しては 「 頼むから話しかけないでください 」 みたいな緊張した顔つきで歩いていたんじゃないかと思う。なので自ずと機会は少ないはずだが、それでもレストランやデパート、それに地下鉄などパブリックな場所で話しかけられることがよくあった。
そのうち余裕が出てくると、街中で、書店で、Liquor Store で、映画館で・・・といろいろなところでたまたま居合わせた人たちと自然な会話をするようになったが、その頃には見知らぬ人に話しかけられると言うことはあまり気にならなくなっていた。
まだ僕自身が見知らぬ人に声をかけるのはまれだが、それでもたまにカメラを渡されて撮影を頼まれたり、共通の話題が聞こえてきたりしたときなどは、僕の方から声をかけることも増えてきた。
余談だがその癖で東京で同じ事をすると、変な目で見られてしまうのは参った。こちらは別にナンパするわけでも、何かを盗むわけでもないのだが、店員に話しかけると一様に警戒した表情が返ってくる。こういう小さな違いが 「 アメリカかぶれ 」 と呼ばれてしまう部分なのかもしれない。くわばらくわばら、である。
さて僕の住む New York でも見知らぬ人同士で会話が始まることはそれほど珍しくないので、今ではすっかり慣れきってしまい会話のあとその内容について意識することも少なくなった。
ところが Atlanta はそんな頻度ではないのである。行く先々で色々な人に声をかけられるのだが、New York で慣れているはずの僕が驚くくらいなので、大昔の僕だったらもっとびっくりして、きっと引いてしまったに違いない。
前回紹介した MARTA の地下鉄を待って駅のベンチに腰掛け、することもないので携帯電話のゲームをしていると高校生や大学生ぐらいの African American の若い人たちに携帯のメーカーを尋ねられることは一度や二度どころではなかった。携帯やゲームに興味があるのだろうが、僕がやっているゲームを横から見てコメントを発してくる人もいたくらいで、こちらもなんだかリズムが狂ってしまう。
また別の駅でやはり電車がやってくるのを待っているとすぐ横には中年男女のカップルがいた。女性の方はなんだかとても楽しそうにケラケラと笑い声を上げているのをみて、仲がとても良い夫婦だと思っていた。すると僕がそちらに顔を向けていたのに気がついたのか、その女性が、「 この人には参っちゃわよ。もうしつこくてしつこくて。私たち今あったばかりなのよ 」 と言うではないか。
いかにも昔からの知り合いのようにして笑い声をあげていた二人は見ず知らずだったのだが、そのあとすぐきた電車に乗り込むと僕もその輪の中に巻き込まれることに。
僕が座ったすぐ横には若い黒人女性が二人座っていたのだが、この人たちも会話に混じりとたんに車内は騒がしくなる。そのうち僕がどこから来たのかという話題になり、皆が口々に 「 あそこに行くべきだ 」 とか 「 いやこっちの方が写真を撮るならいいにちがいない 」 と喧々囂々の井戸端会議が電車の中で開催されるのである。
こんな事は僕が一人でカフェで座っているときや、公園で休んでいるとよく起きたし、また街ですれ違う人たちも声を掛け合う割合が New York、それにこのあとで訪れた Chicago や Detroit と比べても明らかに多い。
New York に戻ってきてから南部出身の友達にすると、「 それが Southern Comfort 」 という。
Southern Comfort とは直訳すれば南部地方の安らぎ、ときくつろぎということになるが、僕の勝手な解釈で 「 もてなしの心を持つ南部気質 」 とではないかと思う。
僕の恥をさらすようで本当は書きたくないのだが ( 苦笑 )、実は Atlanta 滞在中に財布を紛失した。
あるはずのポケットに財布が無い、と気がついたのが、最後に持っているのを確認してから30分後。落とすとすればインターネットを使っていたホテルのロビーだろう。そういえばあそこのソファは深く腰掛けるので、知らず知らずにポケットから滑り出てしまったに違いない。
・・・と落とした場所の推測はついていて、それが安全なホテルのロビーという特異な場所ではあったが、ここもいわばパブリックな場所である。道で落としたのとは違って、それなりのホテル内だからお金に困っている人は少ないはずである。
でもそんな希望的観測より、旅行先で銀行やクレジットカード、それに身分証明書である免許証がないと飛行機にも乗れず、金銭的にすぐにでも困ってしまうことが焦りとなって、それどころではなかった。
試しにロビーにほど近い位置にあった Concierge に尋ねると、ここに紛失物の届け出は来ていないけれど、フロントがその種の情報を集めているからそこで聞いた方がよいとのこと。
早速フロントで尋ねると、すぐに遺失物紛失係に電話をしてくれ、どうやらそれらしき財布の届け出があったとのこと。
それがホントならクレジットカードを停止しなくて済む・・・とひとまずほっとして、担当の人が来るのをフロントの前で待つことになった。
その間最初に対応してくれたフロントの女性 - この女性はカウンタの向こう側でなくこちら側にいて、宿泊客の誘導をする係の女性だったが - このときになって初めてこの女性を、失礼のない程度に観察する余裕が出てきた。
ストレートの髪が肩まで伸びたスレンダーな黒人女性で、年の頃は20代前半というところ。かわいらしいという面影もあるけれど、ホテルのユニフォームでなければゴージャス系かもしれない。
するとその女性が僕の持っていたカメラバッグに気がついて 「 Atlanta には写真を撮りに来たんですか? 」 と尋ねてきた。そこで New York から来ていること伝えると、あら私も Bronx 出身なんですよ、でもこちらの方が私にはあっているみたいです、とのこと。
New York にはときどき行くから、そのときに Head Shot を撮ってもらえないかしら? 良かったら連絡先を教えてください、と冗談とも本気ともつかないことを小さな笑顔を見せながら言う。
「 子供を産んだばかりでやっと元の体重に戻したばかりなんです 」 というので、思わずびっくりしてしまった。
そんなことを話しているとホテルの従業員が見覚えのある僕の財布を持ってきてくれた。
開口一番、「 もう留守番電話メッセージ聞いたんですか? それともメールを読んだんですか? 」 という。
どうやら届け出をうけたあとすぐに財布のなかの名刺を見つけて、いろいろなところに連絡を取ってくれていたらしい。
こうしてホテルの従業員に礼を言いながらチップを、そしてストレート髪の女性には名刺を渡してロビーを後にしたのだが、あれだけ焦ったばかりだというのに、今はなんだか嬉しい気持ちになっている自分に気がついたのだった。
この日朝から僕を癒してくれたのは、Southern Comfort だった。

Southern Comfort の話を興味深く読みました。なんだか,私もAtlantaに行きたくなりました。以前は,南部の中心都市で差別的な町と考えていたのですが,これを読ませていただいて変わりました。
それにしても,ビルの谷間の写真よく撮れていますね。この写真,ちょっと黄色いのは天候のせいですか。
私がアトランタに初めて行ったときも、随分多くの人たちに話しかけられて困惑しました。当時はYMCAに宿を取ったのですが遅く着いたのでチェックインできず、途方も無く宿探しにスーツケース引っ張りながらダウンタウンを歩いていたので恐怖のどん底でした。ようやく安モーテルを見つけて部屋に入っても数人がついてきて遅くまでドアをノックするので、寝た心地がしませんでした。好奇心旺盛で話しかけてくるんでしょうけどね。
Southern Comfort、私もAtlantaで実感した経験があります。
皆さんフレンドリーで親切で・・・Atlantaが大好きになりました。
それにしても、お財布見付かってよかったですねー
戻ってくるなんて、きっとHiroさんだから、だと思います。
私もまたAtlantaに行きたくなってきましたー
お財布ほんとによかったですよね。
この日記を読むと、どうもうちの母にぴったりのところのようです(笑)。日本にいても変わらずいろいろと話かけるし、ウェイトレスさんにいらぬことを言ったりするので不審がられたり、場所によっては迷惑そうな顔をされるのでちょっとかわいそうになります。こういうちょっとしたコミュニケーションがあると気持ちも和んでいいんですけどね~。
PS6さん、先日はどうも~。
財布が戻ってきて・・というかクレジットカードやキャッシュカードが戻ってきてほっとしました。
免許証も入っていたから住所もわかるし、クレジットカードなんかいくらでも使えましたからね。
コミュニケーションが取れるぐらいの生活のゆとりって必要ですよね。ときどき自分でもそれを忘れて後からいかんいかん、と自省を促されます。