( 『Detroit紀行』と題して先月訪れた Detroit の写真と文を紹介しています )
Detroit 市がルネッサンス計画と名付けて都市再生を図っている、という話を紹介したがそのプランの一環なのか、僕が訪れたときにいくつかのイベントに出くわした。
滞在していたのはこの Renaissance Center にあるホテルだったが、チェックインするときにもレセプションの人が 「 夏の間はホテルのすぐ横で野外音楽祭が毎週末行われるんですよ。割と評判がいいので良かったらどうぞ 」 と勧められた。
高層階の客室から外を見てみると、実際ホテルの人が教えてくれた通り大きな川沿いに大きなステージが設営されており、スタッフたちがスピーカーやマイクのテストをしている様子がうかがえた。
どうやらここで夕方から夜にかけて音楽祭が開かれるようだ。先週はジャズだったとかで、今週末はロック・・・と毎週テーマが異なるらしい。
荷物を片付けたあと、飛行機の旅の疲れを癒すこともなく早速カメラを持って外に飛び出したのだが、夕方に一度部屋に戻る機会があった。
するとすでに音楽祭は始まっていると見え、音響のテストではなく頭から終わりまで通しで演奏が階下から聞こえてくる。
もちろん僕の部屋は40何階かの高層フロアだったので、窓など開くはずもなく、しかもそのガラスはとても分厚い。それにも関わらずステージから割と大きなボリュームで聞こえてくるのだから、チェックインした後、夕方にちょっと昼寝ようなんてことは無理だったに違いない。
しばらく客室で PC と向かい合った後、またカメラを持って外に出た。そして数時間後に再び客室に戻ってくると、なんと室内に入ってくるボリュームがさらに大きくなっているではないか。
どうやらすぐ横にもう一つの野外音楽堂があるらしく、そこからの演奏と歌声も聞こえてきているのだった。
おそらくどちらかの会場にいれば、最寄りのスピーカーから聞こえてくる音声で隣のコンサートの音など聞こえないのだろうが、運が良いというか悪いというか僕が滞在していた客室は頭上にあたり、ちょうど三角形の頂点にいるようなものでその両方から二種類の音楽が聞こえてくるのだった。
さすがにこうなると音楽も騒音である。部屋でテレビを見ていてもインターネットブラウズしていても落ち着かない。
そこでカメラを持って下に降りてみることにした。

高速エレベータで1Fに着き、さてどちらの音楽祭に行こうかと考え、ロックのミュージックフェスティバルは僕の客室からでも見えたこともあって、部屋からは見ることの出来なかった、もう一つ別のコンサートの方に耳を便りに向かうことにした。
ホテルの目の前のロックミュージックフェスティバルは主に白人観客層だったのに対し、僕が歩くのと同じ方向に向かっているのは気がつけば黒人だけになってしまった。
着いてみると実際こちらの方が規模も大きくステージも常設タイプのものである。当然集まっている人数もこちらの方が何倍も多いのだが、周りを見渡してもアジア人は僕だけ、白人も数人。この分だと黒人が95%、ラテン系が4%、そして残りの1%未満がその他という人種構成になっていた。
とはいえ決して居心地が悪いわけではなく、それは演奏と歌はソウルミュージックだったから、というのもあるかもしれない。
とにかく僕はこちらに腰を落ち着けて聞くことにした。
やっぱりと言うべきか、ここに来るともう一つ隣の音楽祭の音はほとんど聞こえてこない。こちらで演奏と演奏の間が空いたときにだけ、音が聞こえてくるといった具合だ。
近くには食べ物や飲み物の屋台がたくさん並び、さしずめ日本の夏祭りといった感じで、昼間食べたらさしておいしくないものも、こんなところではごちそうになる。結局僕もここでスナックを買って演奏の終わりまで長居してしまった。
不思議だったのは日中ほとんど人が歩いていないこの街に、週末の夜とはいえこれだけたくさんの人が集まって音楽を楽しんでいるという状況だった。
フェスティバル終了後のホテルに戻る道すがら、あたりの駐車場も路上駐車もとにかく車で溢れている様子があちこちで見られ、それだけ車に乗って見に来ている人が多いということなのだろう。
近くにはカフェもレストランも無いので、ほとんどの人はこれだけのために集まり、終わればすぐに帰ってしまう。
ルネッサンス計画のおかげで人は集まるのだが、街を歩く人はすぐに居なくなってしまうので寂しい街にすぐ舞い戻ってしまう。再生というにはまだ道が遠いようだ。

そんな Detroit が持つ空虚な街並みはは、川沿いの街の明るいネオンとは対照的である。
僕の部屋は河に面していたのだが、それほど幅の広くないこの河の向こうに広がるのはカナダである。
ホテルの隣には河の底を走るトンネルの入り口があり、ここにカナダに渡るためのパスポートコントロールがある。ホテルの人によれば、$5だかそれぐらいの金でカナダに渡ることが出来るのだとか。
その河の向こうにはカジノホテルが誘蛾灯のように Detroit 市民を誘っているのだった。
( Detroit にも実はカジノがあるのだが、夜、ギャンブルのためにカナダに行く人も少なくないのだとか )
これまで Detroit は自動車産業の発展とともに繁栄してきた街、というイメージがあったのだが、この風景を見るまで国境の街、という印象は僕には無かった。
なぜだかわからないが辺境というイメージからどうも廃れた印象を受ける。Detroit は僕が少年時代を過ごした東京のはずれに見られた風景とどこか重なるのである。
アメリカとカナダは往来が盛んで、個人でも気軽に行き来が出来るとはいえ、ここもどこかもの寂しい印象を受ける。こちら側が空虚なのに対して、向こう側がきらびやかなネオンで彩られてるせいであろうか。
おそらく気軽に行き来できる分だけ、Detroit の自動車産業の衰退とともに街から活気が消え、そのためにこちらに渡ってくる人が減り、逆にカナダに遊びに行く人が増えたのかもしれない。
それとも対岸のネオンは単なる幻なのだろうか。

賑やかなフェスティバルから一夜明け、重たいカーテンを横に引くととまぶしい光が飛び込んでくる。
鮮やかな緑色をした河の向こう側のカナダの街が大きなガラス一面に広がった。

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