思い出のシーンとは、それがまるで写真であるかのように、心の中にくっきりと残ることがある。
写真のように、と書いたが実際にはそのときのにおいとか、音とか、肌で感じた温度など、写真よりはるかにリアルに感じることも多い。
それでも人は記憶とか思い出といったものを形に残そうと、写真やビデオに撮る。その行為はまるで薄れていく記憶を少しでも止めておこうとしているかのように。
先日、僕は Rockefeller Center に来ていた。
日本でも毎年テレビで紹介されるそうだが、もちろんここ New York でももっとも有名なクリスマスツリーがあるところとして、知られている。
クリスマスツリーの点灯式はテレビでも中継されるが、もちろんそれを見るためには早くからここに来て並ばなくてはならない。
混雑するのはその日だけではなく、クリスマスを過ぎ新年を迎えても常にたくさんの人出で賑わう。
さすがにたくさんの人がいるときは無理だと思って、割と遅くに行って三脚を使って写真を撮ろうとしたことがあるのだが、やはりそれでも三脚の使用は禁止だと聞かされた。
それからは Rockefeller Center のクリスマスツリーはスナップ写真として撮ることはあっても、それ以来きちんと時間をかけて撮るのはあきらめることとなった。
今回、土曜日の夕方という、一番クリスマスショッピングで混み合う時期にそれも5番街にやってきたので、それはもう歩道は歩くだけでも難儀をするといった有様だった。僕は一度も見たことが無いのだが ( 僕がアメリカに住むようになったあと始まったからなのだが ) ミレナリオとかルミナリエもものすごい混雑だと聞く。きっとそれと同じなのかもしれない。
昔上野動物園にパンダが来たときのようにミレナリオでは立ち止まることが許されない、と知り合いから聞いたのだが、さすがに Rockefeller Center のクリスマスツリーはそこまで規制はない。
皆名物のクリスマスツリーの前で写真を撮ろうと、あちこちで撮影が行われている。
その中でも特に皆に好まれるのが正面の撮影スポットである。ここは両脇にライトアップされたエンジェル像が建ち並び、正面にクリスマスツリー、そしてその後ろにはブルーにライトアップされた Rockefeller Center ビルがそびえている。

※ この写真では混雑ぶりがあまりないように見えるが、かなりすごいことになっている。目の前の人たちが驚いてみているのは・・・

※ 5番街をはさんで向こう側にある Saks Fifth Avenue デパートの壁にイルミネーションが現れたからである。一定時間ごとに音楽とともにショウが始まる。
そのため、係員がいないにもかかわらず、ここだけは自然と行列ができ、旅行できた人や家族連れがクリスマスツリーをバックにして記念撮影をしようとしている。
実は僕もその列に並んで写真を撮ることになった。
それぞれのグループはたいてい数分ずつ時間を取るのでなかなか列は進まない。また横から割り込んで写真を撮ろうとする人がいるので、そのために行列に並んでいる人たちが注意したりしてそれだけで撮影の時間が余計にかかる。
そんな僕らの前に若い男女のカップルが並んでいた。
あるときその男性が振り返って 「 お互いに写真を取り合わないか? 僕がそちらの写真を撮るから、僕らの写真をこのカメラで撮ってくれない? 」 と話しかけてきた。
僕は 「 あ、僕は撮る側で自分は写らないから・・・ 」 というと、その男性はそっか・・と残念そうにまた前を向いてしまった。
僕は、「 僕が君らを撮るのはかまわないけれど僕のことは撮らなくてもいいよ 」 という意味で答えようと思ったのだが、どうやら僕が彼らの写真を撮るのも断ってしまったと受け取ったようだ。
その場ではそのことに気がつかず、ちょっとしてから自分の答えた内容が誤解されているな、と気がついたのだ。訂正しようかと思っているうちにまた前に割り込もうとした人がいたりして、ついそのことを忘れてしまった。
まあこんな会話とはタイミングみたいなものだから・・・。
ところが彼らの前の組が写真を撮る段になって彼はまたキョロキョロと周りを見ている。どうやら写真を撮ってくれそうな人を探しているようだ。でもどうも見つからず僕にまたすまなさそうに 「 悪いんだけど、写真を撮ってくれませんか? 」 と尋ねてきた。先ほど断ったつもりはなかったら、「 いいですよ 」 と答えて彼が手にしていたカメラを受け取った。
簡単に使い方を説明しようとしてくれたが、このカメラは僕も持っているコンパクトカメラだったので 「 あ、僕も同じのを持っているから使い方はだいたいわかりますよ。なにか設定を変えた方がいいですか? 」 と聞くと 「 設定してあるからそのままシャッターを押してくれればいい 」 とのことだった。
ところがそのあとも何となくもじもじしていて何か伝えたそうである。
そして意を決して彼が口にしたのは、「 悪いんだけど撮影に5分くらいかかるんだけど、いいかな? 」 という言葉だった。
5分くらい、なんでもないよ、気にしないで、と答えると、程なくして彼らの前の人たちが横に退いた。
さてどんな風に並ぶのかな、と僕が構え始めたところ、その男性はポケットの中から小さな箱を取り出して、突然女性の前にひざまづいた。
僕も 「 えーっ聞かされてないよ! そんなことだったらもうちょっときちんと構図を考えてあげたのに・・・ 」 と思ったがそう感じたのは僕だけでなく、もちろん彼女も同じで、半分泣きそうになりながら頬を紅潮させていた。
僕自身なるべくたくさんの写真を撮ってあげようと、他人事ながら必死になってしまい彼が何を話しかけていたのかはよく聞き取れなかった。その間彼女は 「 Are you serious? Oh my god. Are you serious? 」 をずっと繰り返していた。
そしてついにその彼が 「 Will you marry me? 」 というと周りから応援のヤジが飛び、彼女も縦に首を振ると、あたりは一斉に大きな拍手で包まれた。
並んで待っている間、さすがに横に彼女がいるから僕にプロポーズをするところだとは伝えられなかったのだろう。
聞いていれば僕が持っていたカメラで撮ってあげることもできたし、そうしてあげようかなと途中でカメラを切り替えることも考えた。
けれども最後までコンパクトカメラで撮ったのはやはり彼らに撮っての写真とは何だろう、と考えてのことだった。
うぬぼれではないけれど、もし僕が持っていたカメラで撮ったらコンパクトカメラの写真よりはきれいな写真が撮れただろうとは思う。それはセットアップして撮ったようなものになったかもしれない。
けれども彼だってそんなことはわかっていてこの日のために指輪とコンパクトカメラを持ってきたのである。そんなきれいな写真でなくて、いつでもどこでも二人が使っているカメラ、二人の歴史を刻んできたカメラだからこそ、思い出の写真になるのかもしれない、と思ったのだ。きっと彼女は気持ちも高揚してまわりの事も見えてなかったかもしれない。けれどもこの日ここでプロポーズされたことは一生忘れないだろう。この日撮った写真はその記憶の足しになれば良い。
ほんとはもう少しきちんとおめでとうを言いたいところだが、後ろの行列を考えるとそうも行かない。
興奮している二人にカメラを返して、僕も自分の撮影を済ませた。
一通り写真を撮って、液晶モニターでその内容を確認していたところ、先ほど二人が話しかけてきた。
「 思い出の写真がとてもきれいに撮れていました。ありがとうございました 」
実は内心、「 ミスしていたらどうしよう。やり直しできないしな 」 と思っていたのだけれども、こんな機会に写真を撮ることができて、僕までうれしくなってきた。
今まで写真を撮ってきた中で、素直に一番うれしいひとときだった。
Congratulations! and Happy Holidays!

いい話ですねぇ^^
テレビを見ていると海外では番組の生放送中にプロポーズだとか、微笑ましいけどハプニングみたいな映像が流れたりしますが、ひろゆきさんは、まさにそのシーンを目撃するばかりか、「証拠」まで撮ってあげたのですから、彼たちにとっても忘れられない恩人ですね(^^)
これを日本人がするとどうかなぁ^^;
アメリカならではの、素晴らしいエピソードですね。
>今まで写真を撮ってきた中で・・
経験はないけれど、とても気持ちが伝わってきました。
話はぜんぜん変わりますけど、日本では「欧米か!」っていう漫才が人気です。
前述の日本人に似合うかなという仕草などを面白く仕上げています。
http://www.youtube.com/watch?v=xWyUPcgHRmk&NR
彼らの人生のbig eventに付き合ったのですね!事前予告されなかったhiroさんもあわてたかもしれないけど、その瞬間の写真をhiroさんにとってもらった彼らはラッキーですね。デジカメでも素敵な写真になったんでしょう。
こんな瞬間を目撃できると幸せを少しおすそわけしてもらったようで、素敵な一日になりそうな感じがしますね♪
なんだかこちらまでドキドキしちゃいました~。
お二人が末永くお幸せでありますように・・・と、思ってしまいます。
はぁ~、ちょっと羨ましい<こらこら(笑)
ヲトメは何歳になってもドリーマーなのですっ(><)
いいじまちゃん、
そうですね、アメリカ人はサプライズが好きですから、誕生日も本人に知らせずに本人のアパートに乗り込んで食事などを準備して、招待客が部屋の中に隠れている・・なんてことをやっちゃいますね。
プロポーズもやはりそんな一つで、ロマンチックなところでサプライズ、というのがスタイルみたいですね。でもたくさんの人前でプロポーズされて動転しちゃう女性もいるし、逆効果な時もあるらしいので相手をよく見ないといけません。
Times Squareの電光掲示板を使ってとか、スポーツゲームの電光掲示板を使って、というのもありますね。
日本人は恥ずかしがり屋だから、あまり見かけないですね。
youtubeの「欧米か!」も見ました。僕ももっとたくさん、ネタを供給できそうです(笑) 今度日本に帰ったらつっこんでください。
tackさん、
僕もほんとにびっくりしました。どうりで写真を撮ってもらえる人がいないかとそわそわしていたんですね。それ以上になんて言おうか、きっと緊張していたんでしょうね。
クリスマスシーズンの暖かいエピソードになりました。
まのさん、
まのさんも是非、Rockefeller Center前のクリスマスツリーで! (^_-)
そのときは写真を撮りに行ってあげますよ!
プレッシャーのかかる「写真撮ってくれますか?」でしたね。ナイアガラの滝をバックに記念撮影しているのとはレベルが違いすぎです。とても気になるのが「ひざまずいたシーンも撮って欲しいの?」という点です。よく結婚式の写真を撮ってくれと言われることが一番難しいと言われますが、これはその上を行きます。
うわーん・・・読んでいて涙が出てきてしまいました。
その女性の感動、感激、見えないけど伝わってきます。
本当に粋なことする彼ですね!私も、画面にむかって大拍手したくなりました。
まるで映画やドラマの1シーンに入ってしまったみたいですね。
こんなサプライズは本当に嬉しいし
しかもNYのイルミネーションの中なので、忘れる事は無いですよね★
こんなプロポーズが、私の幼い頃からの憧れでもあります♪
素敵なクリスマスイルミメーションとその瞬間の幸せが臨場感溢れて伝わってきました。
心がぽかぽかになりましたよ!ありがとうございます。
その瞬間、彼が緊張し、彼女が驚き、周囲が祝福を始めてしまった、というその場のリアルさが
いつまでもそのお二人の記憶とともに鮮明に写真という記録として残るのでしょう。
きっとお二人はそのとき写真を撮ってくださったHIROさんへの感謝も忘れないことでしょうね。
慌しい年末となり日々殺伐としてしまいがちな自分ですが、純粋なこと、大切なことを
ここで思い出させていただきました♪
ひ様、こんばんは。
お元気ですか?
先日お会いしたときは皆半袖で、まだ蒸し暑かった記憶がありますが
いつのまにか今年もあとわずかで。
はやいものですね。
そのわずかの間に結婚、引越しとドタバタしてましたがようやくネット
も開通し落ち着いてきました。
「思い出の写真」
感動しました。
通りすがりの人もまるで家族や友人であるかのように一緒になって祝福する
そのような光景は日本ではまず考えられないので「いいなぁ」と思いました。
(NYでもそんなに出会える光景ではなさそうだけど^^)
あと「ひ様もその時その場にいるべくして居た」そんな運命的な物語である
かのようにも思いました。
きっとカメラの神様が「RockefellerCenterへ向かえ!」と言ったんでしょ
うね♪
eddieさん、
プレッシャーは事前に聞いていたらあったかもしれませんが、何も言われずに直面したのである意味プレッシャーを持つ余裕も無かったんですが、終わってからが緊張しましたね。 I hope I didn't fucked it up...って心の中で思ってました。
Tomokoさん、
その場にいなかったTomokoさんまで泣かしてしまうなんて、やはり感動的な一シーンだったんだと思います。
僕にもっと文才があれば、もう少しきちんと書けるのになぁ。
コメントありがとうございます。
eccoさん、
きっと彼氏はこのRockefeller Centerのクリスマスツリーの前でってずっと考えていたんでしょうね。
その場に居合わせた僕らも幸せのおすそわけをもらいました。
写真はずっと残るから、僕なんか特に光栄かもしれない。
KAJUさん、
僕らもその場にいて心が温まりました。ブログでは出来事だけを書くことも多いけど、こんな風に感じたことを書き留めておくというのが、後から読み返すときに重要なんじゃないかなと思って、そのときの気持ちを思い出しながら書きました。
心のゆとり、とか余裕とか・・・忙しい年末だからこそ忘れないようにしないと行けませんね。
tarcalさん、
あれ! この間会ったときは結婚するなんて一言も言ってなかったからびっくりしたよ! ともかくおめでとう! 今度は自分が撮られる側に回ったんですね! 緊張したことでしょうね。今度京都に行ったらそのときの写真も見せてください。
Rockefeller Center で写真を撮ってあげたこの若いカップルが年を取ってこの写真を見たときに、この日のことを思い出してくれたらそれほどうれしいことは無いですね。
遅ればせながら、おめでとうございます!
こんな素敵な出来事の重要な「スタッフ」として立ち会えたのが
ひ@NYさんでよかったとなんだか私まで心が温まりました。(笑)
Emmyさん、
カメラで写真を撮っていてうれしいな、と思うひとときですね。感動の一瞬を捉えるってそうあちこちに無い機会ですよね。
最初に断ってしまったままだったら悔やまれたかもしれません。良かった良かった。
お久しぶりです。いまさらのコメントになっちゃいますが…。
初めて行ったNYで、エンパイアステートビルで、目の前でプロポーズするカップルを見たんです!
おお?おおおおおお?という感じだったので、彼らを脇に少し入るように記念写真を撮っちゃいました(無断です…)。
ガサゴソとビニール袋からおもむろに指輪の箱を出してきて、プロポーズ。
おおお!って感じでしたよー。
しょこちゃん、
今年はあまり接点がなかったけど、mixiの日記は拝見させてもらってましたよ。
さてビニール袋から取り出す指輪・・・きっとカモフラージュのためだったんでしょうね。
NY、プロポーズされるならこの場所10選、みたいなのがあるとすればどこが入るんだろう。
初めてブログを拝見させていただきました。
ずいぶん前の日記ですが、あまりにも素敵なお話だったのでついついコメントしてしまいました。
ひ@NYさんに偶然写真をお願いした2人、とってもラッキーでしたね。
クリスマスのNY、本当にみんなが幸せそうでこっちまでキラキラした気分になりますよね。
これからも頑張ってください!
maricombさん、ようこそ!
コメントありがとうございます。僕も頼まれたときはびっくりしましたよ。そんな一生の大事な瞬間を僕に任せていいのかな?なんて。
NYの秋/冬らしい一場面でした。
でも未だにこうしてこのブログを読んでくれる人がいて、僕もうれしかったです。これからもよろしく!