金の斧、ダイヤの指輪

毎日のように車を運転する人は、他人が運転する車に乗るのが怖い、という話をよく聞く。
なるほどブレーキのタイミングとかどのくらいの速度で交差点に入っていくかの違いに個人差があり、普段から運転する人はそれが体になじんでいるからなのだろう。
僕の場合、運転しない人からもそう言われることがあるので、それだけ僕の運転は乱暴だということなのだろう。
ハンドルを握ると人が変わる、という表現があるが、確かにそういわれればそうなのかもしれない。自分で自分の運転にゆとりがないな、というのがわかっているだけに始末が悪い。
運転が乱暴なことを他人のせいにするつもりはないが、昔はこんなに悪態をつきながら運転することもなかった。
思えば New York に来てからではないかと思うのだが、たまに乗るタクシーでそのことをつくづく感じてしまう。
個人的に、というわけではないがやはり Manhattan 内で運転していると腹が立つのがタクシーの運転手なのだ。
無理な追い越しや割り込みはまだいいとして、青信号でも前が使えているので動けないというのに後ろのタクシーはクラクションを押し続けるし、かと思うと道をふさぐようにして急停車して客を拾うわで、わがままなことこの上ない。
だからといって誰もがこんなドライバーというわけでもなく、やはり中には良いタクシー運転手もいるわけで・・・
先日、New York のローカルニュースでこんなトピックを拾っていた。
Queens に住むタクシードライバーが、女性客が忘れたスーツケースを見つけ、中を開けると31個のダイヤモンドの指輪 ( 31個のダイヤが載った指輪ではなくて、ダイヤモンドの指輪、31個 である ) 。それが無事落とし主に戻った、と言う話である。
それだけならちょっとした美談で終わるのだが ( それでも日本と違って落とし物が戻るなんて New York では珍しいが )、もう少し詳しい話を聞くとなんともそれが New York らしくて笑ってしまう。
テキサスから来たこの女性は、料金$10.70 のところ、$20 紙幣を渡して、「 釣りは$9 」 と言ったのだそうだ。
つまりチップとして支払ったのはたったの30セントである。
料金の15~20%という相場からすればかなり安いことがわかると思うが、しばらくして客の落とし物に気がつくと、こんな扱いにも腹に立てることなく女性客をおろした建物の近くまで行ったそうだ。
けれどももちろんどの部屋かはわからなかったので、タクシーアソシエーション本部に戻ってそこで鞄の中に入っていたテキサスの実家の電話番号を見つけ、持ち主と連絡が取れたのだとか。
こうして無事ダイヤモンド指輪、31個は無事持ち主である宝石商の女性に戻ったが、その謝礼として$100を支払ったらしい。
この31個の指輪の価値がどれだけかは伝えてないが、いくらなんでも謝礼の10倍程度の価格ではないだろう。
最初の30セントのチップの話を聞いたときに、「 計算間違いかも 」 と思ったのだが、謝礼が$100と聞いてそれが計算間違いではなくて、単なるものすごいケチだということがわかった。
そのことを報道陣に聞かれて答えたタクシードライバーのコメントがまたほほえましい。
「 落とし物を捜すために費やした時間分の保障をもらえたんだから、それでいいよ 」
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