2007年5月アーカイブ

毎日使う道具

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言語と道具を使いこなすのが人類の特徴であるが、その道具は骨や石でつくった鏃といったものから時代とともに進化し、いまじゃすっかり形も目的も変わってしまった。

数え切れないほど道具が世の中に存在する現代では、人によって毎日使う道具というのはまさに様々だろう。
僕にとって毎日使う道具と言ったらそれはかつて鉛筆やノート、それに消しゴムといった筆記具だった ( いったいいつの時代だ )。それが今や携帯電話とキーボードとマウスにとってかわってしまった。それこそ筆記具を使わない日もあったりして、思えば短期間ですっかり変わったものである
それでもキーボードとかマウスと言ったらまだいい方で、道具の定義はその先のキーボードとマウスを使って何をするかと言うところになり、つまりソフトウェアやサービスという無形のものを道具と言い始めている。形の無いものを使って形の無いものを作り、報酬も銀行に直接振り込まれるとなると、なんだか今の生活はすべて仮想的にすら思えてくる。中世ぐらいの人がこのスタイルを見たら、いったい僕らは何をしているのかわかるわけが無い(笑)。

その形の無い道具を具体的にあげろと言われたら、僕の場合は画像管理システムとイメージ編集のソフトということになり、ここ最近は特に Photoshop と SILKYPIX を指すことになるだろうか。

実は何ヶ月も前のことだが Adobe と秘密保持契約を結んだ上で開発途中の CS3 について Adobe から話を聞く機会があった。
すでに秘密保持期間は終了しているのでここでそのことを書いても構わないことになっているが、米国ではすでに製品の販売が開始されており、また日本でも近々日本語版が発売になるのであちこちでレビューが掲載されることだろうから、素人の僕が書いたところであまり参考にならないだろう。が運がいいことに一足早く CS3 を使えるようになったのでここではさわりだけ取り上げることにしよう。

※そういえばメインで使っているもう一つの画像管理ソフト、SILKYPIX も開発元からいただいたものでした。タダには弱いけど、タダだから使っているわけではありません(笑)。


今回のバージョンから Photoshp には Extended という新しいエディションが追加された。従来米国では $150 ほどでバージョンアップできたのだが、今回 CS2 からノーマル CS3 へは $200、そして CS3 Extended にバージョンアップしようとすると $350 かかる ( 日本では 48000円? )。
Extended には通常版にはない機能がいくつかあるが、3D やムービーなどあまり写真に関係ない部分を除外すると残るのは32bit HDR ぐらいだろうか。
その機能についても時間があれば試してみたいと思うが、$150分の付加価値を認められるかが Extended Edtition 購入のポイントではないだろうか。
( HDR 自体は CS2 でもできる )


ちなみに僕は英語版の Photoshop を使っている。なのでここで取り上げる機能名など英語の表記のままだが、日本語訳も意味が違うようなものはないだろう。置き換えて読んで欲しい。
もともと Adobe 製品の多くは英語版であっても日本語を割と正しく取り扱えることもあって、ほとんど操作に困ることなく使えている。
もともと画像編集で日本語が必要になることは少なく、あるとすればタイプツールだがもちろんこのツールも OS にインストールされている日本語フォントを選択することができれば、日本語文字列を使用することも可能だ。

今回最初に試してみたのが、「 Black and White 」 機能。
CS2 までこの機能が無かったのが不思議なくらいだが、CS3 にはカラーイメージを一発でモノクロ変換する機能が追加された。実際にはいろいろなフィルターが用意されているが、その中でもドラマティックなのが Infrated ではないだろうか。
Image → Adjustments → Black & White を選び、次の画面で Infrated を選択するだけで下に紹介した写真の二枚目のような効果が得られる。
赤外線フィルタを使用しての撮影はまだ一度も無いが、今回初めて試してみて、これに魅せられる人の気持ちもわからないではない (笑)。



※ Photoshop CS3 にて Black & White, None ( 効果なし )


※ Photoshop CS3 にて Black & White、Infrated ( 赤外線フィルタ ) 効果


Photoshop と SILKYPIX があればほとんどの場面で事足りてしまうのだが、そんな写真編集ソフトにもう一つ気になるものが出てきた。Photoshop と同じ Adobe 社の製品で Lightroom である ( 正確には Photoshop Lightroom というややこしい名前 )。
Lightroom はそのコンセプトを 「 フォトグラファ向けに特化した画像処理ソフト 」 として鮮明にしており、そのセールスコピーに余計に悩まされる。
操作しているところはこれまでにも何度も見たことはあるが、実際に自分で使用したことがないので単なる見聞でモノを言っているのだが、Photoshop よりは操作感が軽快で、かつ機能も必要にして十分、という印象を受けた。
(ところで 「 操作感が軽快で 」 は最初 「 捜査官が警戒で 」 と日本語変換された(笑) )

では Photoshop と Lightroom、どう使い分けたらいいのだろうか。

先の説明会では 「 写真の構図が最終イメージのもので、画像修正が必要ないものならば、Lightroom。一方、ピクセル単位の細かいレタッチを必要とするシチュエーションではこれまで通り Photoshop を使っていただきたい 」 というのが Adobe の提案だということだった。
つまりポートレートで目尻や吹き出物を目立たなくしたり、目を大きく 「 描いてみたり 」 という場合は Photoshp ということになるのだろう。となると作品撮りには Lightroom が向いていて、商用の写真では Photoshop を重宝する、ということになりそうだ。
逆に今回の Photoshop CS3 の RAW 現像が Lightroom 譲り、という言葉のとおり、一般的な現像処理に関しては Lightroom の方が使いやすいのかもしれない。


さて CS3 を使用して気がかりなことが一点。
全体的なパフォーマンスは CS2 より上回っていることを体感できるのだが、複数のイメージを開いてレイヤーを使って処理をしているとさすがにメモリをよく使う。あくまで僕の感覚から書いているが、CS3 はマルチコアプロセッサに大容量のメモリの方が気持ちよく作業できそうである。
新しい Windows OS にはあまり関心は無いが、少しでも快適に作業をするためにはどうやら PC の買い換えも視野に入れなくてはいけないようだ。

Soho、爆発

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夕方の帰宅時、Soho のとあるビルで仕事を終える頃、突然「ドッカーン」という大きな地響きがなった。それは一度だけでなく、二度も三度も。
最初の一発で思わず腰が抜けそうになったんだけど、その場にあるカメラを持って外を見ると・・

ものすごい渋滞の上、なぜかすでに消防車?

どうやらこの騒ぎは少し前から始まっていたようだ。
写真では見えにくいが、乗用車から降りて何事かと見ている運転手もいる。

騒ぎの大元は何か・・・と人気の全くないあたりを見ると黒煙ばかり・・・。



どうやら地下にある高圧電線かガス管かに火が点いて、そこから爆発を起こしているのだった。真下には地下鉄も走っているからそちらの線かもしれない。いずせにせよ、見た目には都会のマグマといった風。
お店の中にいた人も隙を見て、逃げ出した瞬間。

程なく FDNY が消防ホースを持ってきて鎮火作業を開始。
このブロックはごらんの通り、ほとんどゴーストタウン状態。

この後、次第に騒ぎは収拾していったが、New York という町は大都会とはいえその古さがこうして時々露出するのである。この上にまた何事もなかったかのようにつぎはぎをしながら、この街は成長していく。

先週末まとまった時間が取れたので前々からやろうやろうと思っていた、いろいろなことに着手した。
その一つは部屋の整理で、こちらは早々に飽きてしまった。けれども長らく使用しなかったものなどを廃棄したので、だいぶすっきりした。写真を飾るスペースもできたので、あらかじめ購入しておいたフレームに写真を入れて壁にかけると、それまで飾り気の無かった部屋が少しばかり華やぐ感じだ。
これまでどうも実用本位で部屋の中にものを配置していたのだが、それを思いっきり壊して 「 見せる 」 ことを意識して並べ直すことで雰囲気ががらっと変わる。

その次に着手したのが、このブログである。
僕は Movable Type を自前でインストールして使っているのだが、しばらくバージョンアップをスキップしてきたために新しい版のそれと比べると機能の点でだいぶ見劣りするようになってしまった。
そもそも Movable Type は改造できることが利点となっており、僕もだいぶ手を入れているのでバージョンアップが一筋縄ではいかないのである。それでバージョンアップを見送ってきたというわけである。

ちょっと時間があるから・・・と気軽に始めてしまった、Movable Type のバージョンアップであるが、結局数時間の予定が一日、二日・・・しまいには一週間もかかってしまい、ブログの更新も停止せざるをえなくなった。

もちろんデータベースのバックアップを取り、新たに Movable Type をインストールしてそちらでテストと改造をしていたので、これまでの New York Watch ブログにはなんの支障もないのだが、二つのデータベースを使っているのが長引くとデータベースに違いが生じてしまい ( つまり皆さんからのコメントなど )、その分は個別にデータベースをインポートするなど手間がかかる。
ということでここしばらくは意図的にブログに記事を投稿しないようにしていた、というわけである。

・・・ということでこの投稿が読めることからわかるように、予想よりだいぶ遅くなってしまったが無事バージョンアップを終え、いくつかの新機能も追加することができた。

最初に取り付けたのは 「 タグ機能 」。
最近はメールソフトの中にもタグの機能をサポートしているものが出てきたから知って人も多いと思うが、ブログのエントリーに現れる言葉などをキーワードにしてカテゴリを超えたエントリー同士のグループ化が簡単にできるようになった。サイドバーにある 「 Tag Could 」 はエントリーに登録したタグの出現率の高いキーワードが目立つように表示される。現時点では過去分のブログへ、タグ付けが完了していないのでまだ一部しか表示されていないが、これからもっと増やす予定である。

そしてそのタグ機能を用いて新たに追加したのが 「 Gallery 」 へのリンクである。
このブログで投稿してきた過去のエントリーにそれぞれ含まれる画像の中で、ギャラリーとして集めたいものだけにタグをつけ、それをサムネイル化して表示しているのである。

ところでその機能はもちろん僕が一から作ったものではなくて、Movable Type 用のプラグインを用いて組み合わせたものである。
今回のギャラリーは EntryImages というプラグインでできている。ところが当初公開されていたこのプラグインではタグによる画像を抽出する機能がなかったようで、だめもとで作者の方にタグが使えるかどうか尋ねるメールを送った。
確か夕方仕事が一段落したところでメールを書いたはずで、その後ジムにでかけたのだが、そこから帰宅してメールをチェックするともう作者の方からメールが入っていた。
それによると、タグが使えるように機能追加したものを作ったので、どこどこのリンクからダウンロードして欲しい、という内容のものだった。
( こちらはジムでちんたらちんたらしていたというのに、こんなに素早く対応していただき、どうもありがとうございました > 作者の Fujimoto さん )
そのお礼と言ってはなんだが、この方もフリーランスで働いているというので、氏のホームページから早速ドネーションさせてもらった。

ちなみにこの New York Watch ブログで使用しているプラグインは他にもこんなものがある。

MTPaginate
MTTagInvoke
captcha

これらについてはここよりもっと詳しく、かつわかりやすく解説しているサイトがあるので、「 New York Watch での使い方を知りたい 」 という奇特な方でもいない限り、ここでは省略させてもらおう。


さて新しい機能も無事動いているようでなによりだが、ただ一つだけ気がかりなことがある。

皆さんからのコメントを頂戴してからの処理に異様に時間がかかってしまい、しばらくはタイムアウトを起こしたと思ってしまう人が続出するのではないかということ。
まだチューニングはできていないので、それまでは投稿ボタンを押したあと忍耐強く画面が変わるまでお待ちください。

New York では使われていない壁とか、工事中の囲いなどは広告と graffiti の格好の対象になる。
味気ない壁も時間がたてば、上の写真のように独特のアイデンティティを見せてくれる。

似たコンセプトのものはあちこちにあって、その中でより強い個性を示すのは難しいと思うが、この車は間違いなく強烈なアイデンティティを発していた。


場所柄、フェラリーリが走ったりする Soho でのことだが、この日は誰の目に見てもこの車の注目度が一番。

ボンネットも抜かりはない。"ハイテク"なものを集めて、顔を形成しているなど立派にアートしているよね。



乗っているのはこんな人。Dean and Deluca の真ん前に横付け。

助手席の人もイケテマシタ、いや、イッテマシタ。


Photoshop CS3にてトーンカーブ変更

この蔓を見て、子供の時に読んだジャックと豆の木の童話を思い出した。
そのときは人間がよじ登れる蔓なんてあるわけない、と夏休みに水やりをした朝顔の蔓のことを頭に浮かべながらそう感じていた。
この立派な蔓を見るまでは。

空によじ登れるような、こんな蔓がヨーロッパにはあるのかもしれない、ということを何十年も経ってやっと悟った。

何を隠そう、カレーは僕の大好物である。
子供のころから一度も飽きたことが無くて、それは今住んでいる New York でも変わらず、である。

カレーは何を持って 「 ほんもの 」 というのか難しい。生まれ故郷であるインドやバングラデシュ、パキスタンはもちろん、アジアではほかにもタイのカレーもあるし、カリブ海のジャマイカやガイアナなどでも食べられていて、もちろん日本のカレーも同じ仲間であるがそれぞれ別物と言ってもいいかもしれない。

カレーは国ごとに違うだけでなく、その国の中でもさらにカレーの味がいろいろ分かれているが、節操の無い僕はどのカレーもいける。
そもそもカレーを一種類の料理と思っていないので、それぞれのカレーを特色として楽しめるのがカレーが好きなゆえんかもしれない。

タイのカレーもかなり独特だと思うが、日本のカレーもかなり特異な進化を遂げたのではないだろうか。
日本のカレーが独特だと思うのは、日本特有のふっくらした日本米に合った味付けになっていることである。
インドや他のアジアで食される細長くてぱさぱさした米と違って、日本のそれはボリュームがしっかりしているので、カレーもそれに負けないコッテリルーが多い。
僕が知っているカレーは日本のカレーだったから一番なじみがあると言っていいのだが、New York でもそれほどたくさんの日本のカレーが食べられるわけではない。
( ちなみに LA 近郊にある、ハウス社が経営しているカレーハウスが New York に来てくれたらかなり、というか思いっきりうれしいのだが )
そこで日本のカレーが食べたくなると、日本食材店でカレーのルーを買ってきて自分で作るのだが、一度作ると大量にできてしまうので、さすがに好物と言っても3日連続となると次第に飽きてくる。
しかもカレーはその頃が一番おいしいのに (笑)。


ということでカレーハウスはまだ New York 進出を果たしてないけれど、日本でカレーチェーンを展開している ( らしい ) ゴーゴーカレーがアメリカ進出第1号として New York に出店した。
僕は日本で一度もここのカレーを食べたことが無いどころか、このお店の存在すら知らなかった。僕が住んでいた10年前には無かったのではないかな?


このゴーゴーカレーは、Yankees にいる松井の55にかけているらしく、創業者は Yankees のお膝元 New York に出店するのが夢だったらしい。
実は知人がだいぶ前からこのプロジェクトに関わっていて、最初は Manhattan にある吉野家のうち、閉店が決まった店舗を借りると聞いていたのに、その話が無くなったとかで無期延期なのかなぁと心配しているところだった。

ゴールデンウィークの後半で日本から来た友達が New York を去っていくころ、このお店は開店にこぎつけた。
ゴーゴーにちなんで5月5日にオープンしたい、と聞いてたとおりほんとにこの日に開店。開店のときは日本でもカレーが55円になるとかで、ここ New York でも初日から三日間は55セントと聞いて、先着にはもれるかもしれないけど、応援をかねて行ってみようかと二日目の夕方に友達と行ってきた。


日系のフリーペーパーには広告が載っていたけど、あまり知られていないのでは? それに38th Streetの8番街近くとのことで、ちょっとマイナーな場所かな?と心配していって見たのだが、そんな心配をよそに結構な行列ができていた。
一番上の写真がその様子だが、実はもうこの日はこれでカレーが売り切れということで、行列はここでおしまいと案内をしていた。

それほど広く無い店内でテーブルも少なめ。そのためこの日はかなり待たされたけれど、味はまさに僕が日本のカレーに期待していたアレである。
本当はカツカレーを注文したかったのだが、トンカツが売り切れと言うことでこれはチキンカツ。僕にとってはセカンドチョイスのチキンカツカレーでもなかなかイケたので、次回はトンカツカレーを試しに訪れようという気になった。
なんといってもこれで55セントである。これで文句を言ったらバチがあたるだろう。
( ちなみに開店記念セールということで、5月中は一杯5ドルとのこと )

この日はカウンターで聞かれなかったが、辛さの指定もできるといいのだが、これは次回通常オープンのときに行って確認してくることしよう。
場所で不便をしいられるかもしれないが、New York 日本食レストラン老舗が撤退相次ぐ中、産声をあげたばかりのゴーゴーカレーに頑張ってもらわねば。

ゴーゴーカレー

ゴーゴーカレーUSA
http://www.gogocurryusa.com/

New York店公式ブログ
http://gogocurry.exblog.jp/

つい先日、といっても一週間ほど前のことになるが、少々不思議な体験をした。

New York での生活が長くなるにつれ、さほどのことでは驚かなくなっており、ときおりそんな自分に気付き、それほどまでに無関心か鈍感になったのかと驚いたこともあったが、最近それすら驚かなくなってきている ( ちょっと話がややこしい )。

その不思議な体験は、地下鉄で起きた。

Manhattan での一仕事を終え、自宅に向かう Subway N ラインに乗って帰宅しようとホームで Uptown 行きの電車がやってくるのを待っていた。Union Sq.駅のことである。

夕方の混み合う時間ではあったが、東京の通勤列車がそうであるように、こちらでも夕方の電車は朝ほど混まない。帰宅せずにどこかに立ち寄る人もいるから、分散しているのだろう。
その割には本数も多いのでたいてい空席があるか、数駅乗っていればすぐに空席ができるほどである。たまたま前の電車と運行間隔が空いたときなどは異常に混むこともあるが、朝に比べると夕方はそれほど遅れることがない。

ところがこの日はちょっと事情が違った。


ホームで待っていたときにはすぐ近くに7~8人の人がいたから、一つ前の電車が発ってから少なくとも数分は経っていたのではないかと思う。
ほどなくして地下鉄が風を切って入ってきたのだが、その速度が遅くなるにつれ通り過ぎる車窓から中の様子が目に入ってきた。
そうやってパッと認識できた前の車両にはそこそこ人が立っており、少しばかり混雑しているのがわかった。

そうして完全に地下鉄が停止したのだが、僕はちょうど止まった車両の真ん中あたりに経っていた。
New York の地下鉄は日本のそれと違ってドアの前に線など引かれておらず、どこに止まるかは毎回ずれがある。がその日は僕の目の前に扉がやってきた。
電車が止まったあと扉が開くまでの微妙な一瞬に車内の様子が見えたのだが、降りる人は誰もいないようだ。
扉が開いて車内に入ったのだが、妙なことに無人の車両だったのである。
実はそのことに気がついたのは最初地下鉄に最初の一歩を踏み込んだときで、どの椅子に座ろうかなと左右を見渡した際にだれも地下鉄にいないことになんだか変な胸騒ぎを感じたのだ。
そうして今度は前後車両を連結ドア越しに見ると、どちらも人が立っているのが見える。それは乗り降りする人だったのかもしれないが、それに引き替えこちらは最初から無人で、僕が座った頃に数人の人が入ってきただけで、彼らも不思議そうに車内を見ている。

始発でもないのにその車両だけ人が少ないのには理由がある。
日本だと酔っぱらいの落とし物なんかでそこだけ人がいなくなるのと同じように、こちらでもホームレスの人がかなりきつい匂いを発しているとその車両から移動する人がいる。
また真夏の暑い日にその車両だけエアコンが壊れている、なんてことがあったりして、移動していく人もいる。
がどちらにせよ全員が移動してしまうことは少なく、しかも今回はそのどちらにも当てはまりそうにない。


次々と乗り込んだ客はお互い言葉は交わさずとも、「 なんか不思議だね 」 と目で会話しているかのように目線を交わしていた。がどこからともなく感じるその不思議な空気は別の所にもあり、僕らの視線は下に向かった。

僕の目の前の長椅子に座った乗客の左側に、分厚いハードカバーの本があった。と思ったら目の前の人も僕の右側を見ている。その視線に気がついてみるとここにも本が置いてあり、彼はそのタイトルを読もうとしていたようだった。気がつくと車内の長椅子のすべてに本が置いてあり、その車両に入ってきた総勢5人は 「 これはなんだろう? 」 と独り言にも似たような言葉を口にして、それぞれ本を手元に取ってパラパラとめくり始めた。

置いてあったのは書籍だけで、雑誌はなく、またその本はすべてバラバラだ。タイトルも作者も関係無いようで、僕が手にした本は全く汚れてはいないものの、誰かが読んだ後が感じられるような本だったので、中古書のようだった。


誰も乗っていなかった車両に、本が置いてある椅子・・・と来ればどこかにカメラかなにか仕掛けてあり、僕らの反応をビデオに撮っているんじゃないかなどと変に勘ぐってしまったが、当然カメラらしいものはどこにも見あたらない。


実はこのことが起きるちょっと前に新聞に面白い記事が載っており、それとどこか似ていると思った。
斜め読みだったので細かい所は記憶が不確かなのだが、たしか Brooklyn を出発した地下鉄で、アーチスト一団が乗り込み、地下鉄車内を家庭のリビングルームさながらに飾り付けをした、というものである。
窓にはフレームをつけたり、広告が貼られる壁にもフレームをつけたり名画に張り替えたりと、かなり本格的なものだったようだ。
ここが New York らしいのだが、途中警官だったかMTA職員が見かけたにもかかわらず、特に注意をうけるでもなく完成させることができたらしい。

その後のMTAのコメントも割と寛大なもので 「 面白い試みだが、安全上の理由で取り付けたものは撤去せざるを得ない 」 というようなものでなかったっけ?


そんなニュースを読んだばかりだったので、これも何かの試みではないかと思うのだが、どんな意図だったのかは、結局僕にはわからなかった。もしかしたら一週間遅れのサン・ジョルディを企画した一団の仕業だったのかもしれない。
( サン・ジョルディに関しては知人が書いているココが詳しい )
いずれにせよ、真相はわからない方がこういう事は面白いものである。あまり詮索をしてもつまらない。


せわしない都会ではお互いに非礼をなんとも思わなくなることが多く、それだけにこんなことが余計にほっとさせられるのではないだろうか。

May Day

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4月月末から5月の頭といったこの時期は決まって忙しくなる。
日本に住んでもいないのに、なぜかワクワクしてしまうのは、ゴールデンウィークのせいなのである。
こんな大型連休、アメリカはもちろん無くて、New York で一番気持ちの良いこの季節に普段と変わら時間が流れている。
なのに身辺が騒がしいのは、日本から沢山の知人が New York に上陸されるからである。
僕が日本に行ってもなかなか会えない知人と一年ぶりに New York で会う、なんてことが珍しくないのだ。
友達も貴重な時間とお金をかけて来ているので、食事の誘いを受けたときはできるだけお会いするようにしている。
そのため先週から今週にかけて、食生活だけ見るとリッチである。中国料理、ギリシア料理、メキシコ料理、イタリア料理、フランス料理・・と普段ならこんなに一度にしない外食ばかりである (笑)。

僕にとっては5月というと、『 各国料理外食週間 』 なのだが、世間ではそんな甘い気持ちでいられない人もいる。


大学を卒業して、初めての就職。この頃はバブルが始まったころで就職も売り手市場と言われた時期でもある。会社に組合はあったものの、すでに労働と会社という対立など無い世の中で、記録映像なんかで見たヘルメットにマスクして闘う労働者という姿は、どこか遠い国の出来事のように思えて仕方なかった。
その後バブル景気は弾けたが、僕はすでにアメリカで働いていたので暗い世相というのをあまり見てこなかった。

なので強い印象を持っているわけではないはずのメーデーなのに、テレビのニュースなどで 「 May Day 」 と言う単語を耳にするとのぼりにハンドスピーカーで演説をしているシーンを思い出す。
話はそれるが、カタカナで表記する外来語と、本来のアルファベットの綴りが持つイメージのギャップに、アメリカに来て肌で感じたものがいくつかある。
たとえばフィルムとFilmはあまり違和感がなく、テレビとTVもどちらも自然に受け止められる。ニューヨークと New York も割とそうだが、この「メーデー」と「 May Day 」 はどうもしっくり来ない。日本で新聞の見出しにでかでかとメーデーと印刷されているのを読んでも、May Day の綴りは頭に浮かんでこない。


その May Day だが、New York では移民の問題を考える日でもある。
それは不法滞在、不法労働がダブルスタンダードとして当たり前に受け入れられているほど、多いからである。

僕はできることならあくせく働かずに、楽して暮らしたいなどと思っていた。それも日本でもアメリカでも好きな方で働けるのに、恩恵を享受しているどころか怠けることを考えている。
でもここには一生懸命働きたい、合法的に働きたいと努力している人たちがゴマンといるところなんだ。


国の祝日でも何でもない May Day ( 5/1 )、デモ行進は仕事をしたその足で参加する人達も多かったようだ。

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