国が違えば

10年一昔というが、一昔経ってもいまだに日常の些細な事柄に文化の違いというものを感じるのである。
思うに外国暮らしをする以上、常にこのことを感じ続けるんではなかろうか。
情報が簡単に手にはいるようになった今、でも。
毎日何気なく着けているテレビ。商業大国アメリカはコマーシャルが次から次へと流れる。「 ながら族 」 の特性として気にしないでいようと思えば、頭の中から音が閉め出せるのだが、ちょっとまじまじと見る機会があると 「 あれ? 」 と思うことに出くわす。
今回はそのことについてちょっと触れて見る。
ケース1 ~ 「 Volvo編 」
早くから安全性に注力してきたスウェーデンの自動車メーカー、Volvo。
同社が最近テレビで放映しているセーフティに関するコマーシャルはなかなか面白い。
残業で遅くなったのか、深夜とおぼしき時間帯に女性がオフィスを出てくる。
オフィスビルは広い駐車場に囲まれており、その建物からだいぶ離れたところに彼女の Volvo がぽつんと停まっている。
こちらの車のリモコンキーはかなり遠いところからでも作動するのだが、この女性もたぶんに漏れず、まだかなり離れているところからキー取り出してドアロックを解除しようとする。
ところがリモコンキー上の LED ライトが点滅をしている。彼女は顔色を変え、きびすを返してオフィスに戻る。おそらくセキュリティの人に助けを求めに行ったのだろう。
これは車内に備えられた生体検知器が反応し、車の中に誰かがいるときに所有者のリモコンにそのシグナルが送信されてくるという機能のコマーシャルだったわけだ。
確かにハリウッド映画やドラマの中で、人気のない駐車場に止めてある車に乗り込むと後部座席に隠れていた悪漢が銃を突きつける、というシーンがあるが、日常的に発生する事件ではないもののその可能性はなきにしもあらず、といったところなのだろう。
「 安全 」 と言うときのコンセプトが日本とアメリカとで異なる象徴的な例かもしれない。
ところでこの仕様、Volvo の本場スウェーデンでも着いているものなのだろうかと、ちょっと気になった。似たようなオプションが僕の BMW にもついていて、車内にモーションセンサーが組み込まれている。さすがにリモコンにそれを伝えてくれる機能はないが、アラームが鳴る仕掛けだ。
ケース2 ~ 「 GLAD ゴミ袋編 」
GLAD は家庭用品を扱うメーカーとして、ラップやアルミホイルを売っている。
同社が去年ぐらいから展開しているゴミ袋があるのだが、かなり力を入れて宣伝しているのは、このゴミ袋の生地が穴のあいていないメッシュのような材質で出来ており、とんがったものや重いものを入れても破れにくいという特徴を売り込みたいからのようだ。
その長所を訴求しようとしてか、銀行強盗が GLAD 社のゴミ袋を持って犯罪に臨むというコマーシャルが流れている。
犯人が窓口にいる女性行員に、「 それも入れろ、あれも入れろ 」 とオフィスの什器も含めて到底入らないだろうという量のものを要求する。
そしてぎっしり詰まった袋を持って銀行を出るときには表を警察に包囲されている、と言う設定である。
もちろん伝えたいことは頑丈なゴミ袋という印であるが、だからといって銀行強盗にも使えるようなイメージのコマーシャルを作ろうという発想がいかにもアメリカらしい。
ケース3 ~ 「 Time Warner Cable 編 」
Time Warner は言わずとしれた Time Warner Bros ( 映画配給 ) を始め、CNN や AOL を傘下に持つ巨大なメディア企業ある。その Time Warner 系列のケーブルテレビ会社が Time Warner Cable と言い、全米では Comcast と並び一、二を争うほどの規模を持つ。
もちろんケーブルテレビといえばいまやテレビ放送だけでなく、同じケーブルを使ってインターネットプロバイダサービスやインターネット電話のサービスも提供しているのだが、同社が流している IP 電話のテレビコマーシャルは、ローカル電話会社 Verizon との比較広告の形を取っている。特に Verizon は Surcharge と言う名の下で高い金額を徴収していると言うイメージで、Verizon の人間が顧客から支払われたお金を使って無駄遣いをしているシーンが流れる。そのなかで葉巻だったかパイプに火をつけようとしているのだが、マッチの代わりに火の点いたアメリカ紙幣を使っているのである。
テレビのコマーシャルでその国の紙幣を燃やすシーンなど、日本だったら真っ先に処罰の対象になりそうなものだが、アメリカではコインを含めてお金の扱いがかなり自由である。
観光地に行くとかならずあるのが、貨幣を入れてハンドルを回すとそのお金をつぶして観光地のシンボルなどが emboss される機械。まあコインならかわいいものだが、皆平気で紙幣にマジックで印をつけたり、中にははさみでカットが入っているものも。
お金が尊いものと教わった日本人にはなんとも抵抗があるコマーシャルではないだろうか。
こうやってみるとコマーシャル・広告は世相を反映したものだ、と言うことがよくわかる。
文化の違いに気がついたとき、それは自分の中で常識だと思っていたものがそうではない、とわかったときでそのショックが毎日あるからこそ外国での暮らしの楽しいのだろう。