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2007年08月26日

NY風納涼ツアー

カテゴリー [ NY超ローカル ]


日本の学校では夏休みが8月31日までだったせいだろうか、8月が終わるというとそれは僕の中で夏の終わりを宣告されたようなものだった。
たとえその後で暑い日が続こうとも。

今年の New York はそれよりもっと早く夏が終わってしまったかのように、ずっと涼しい日が続いた。そんな中昨日は久々に気温も30℃を超え、湿度も高く、今年一番の不快指数を示していたかもしれない。これだけ暑いと何をするのもおっくうになるが、でも夏らしくない夏なんてずっとつまらないものだろう。

そんな暑い日はアイスに限る! ということで、今 New York でもっとも人気のアイスクリーム店巡りを遂行。 こんな酔狂なプランにもかかわらず、何人か賛同者が参加してくれた。
実は、今ほど涼しくなるちょっと前の8月初旬、NY Loves You という NY 関連情報サイトを運営している友人が日本から遊びにきたことに合わせて New York でオフ会が開かれた。その席で呼びかけたところ、参加したいという人の数がちょうど良い数になり、話がとんとん拍子ではずみ、勢いでその翌日に行くことになったのだ。


ということで今回はヨシュラン風にアイスクリームの紹介である。

まず最初に行ったのが、今年オープンしたばかりで早くも大人気の GROM。
僕がこの店のことを知ったのは地元ケーブルテレビのローカルニュースで紹介していたことからで、New York の街の流行に取り残され気味の僕にしては珍しく早く反応してしまった。結局このアイスクリームショップのことがきっかけとなり、どうせなら話題のアイスクリームショップのアイスを食べ歩いてやろうというツアーが実行されることになったのだが。


テレビでも紹介していたのだがこの GROM というアイスクリームショップは、イタリアから今年 New York 市内に出店したばかりのできたてほやほや・・いやアイスなのでひやひや、というべきか。
何でもイタリア国内にいくつも店を構え、大人気となった店の海外進出第一号が、この New York ということらしい。だからここ以外では本場イタリアだけでしか食べられない・・・という。なんだかそう聞くと試してみたくなるのはミーハー根性か。
テレビでのインタビューにはオーナー自ら出演していたのだが ( イタリア語のアクセントがとても強かったのですぐにわかった )、なんでもこの店の売りはアイスクリームを作るときに使う食材にこだわりを持っているのだとか。たとえばコーヒーだと、どこどこ産の特別な豆だとか、同じようにバニラシーズ、カカオ、フルーツなどすべてオーナー自らが世界中から集めた最高のものだけに限定しているそうだ。

場所は Upper West Side。着いてみると店の前には行列ができている。暑い日に冷たいアイスを買うのに炎天下に並ぶ、というのもなんだか妙だがこの日はこのために来たようなものなので、ためらうことなく並ぶ。その日の待ち時間は20分ぐらいだろうか、自分の我慢強さに感心してしまうが、それ以上に New Yorker の行列好きにももっと感心してしまう。New Yorker なら東京で生活していけそうな気がする (笑)。


店内は奥に多少テーブルスペースがあるようだが、もちろん満席。ほとんどの人が店先で立ちながら食べることになる。
いくつかあるサイズの中から、僕はミディアムを頼む。1カップ、$5.75のミディアムと言っても他のアイスクリームショップのそれと比べると、一回り小さいと思う。僕自身はこの後のこともあるので、一番小さな種類でも良かったのだが、ミディアムだと3種類のフレーバーまで入れられるという。初めての店だし、いろいろなフレーバーが楽しめる方がいいかも、と考えていると。どうやら僕の前に注文している人たちもだいたい似たような考えのようだ。

で僕が頼んだのは、アプリコットと Gianduja とバニラ。Gianduja・・てと思ったがそういえば最近買った DARS チョコレートに 「 シャンドーヤチョコレート 」 と言うものがあったのを思い出した。全くイタリア語は自身がないが、あながち間違っていないと思うのだが。
で店内の案内によれば、伝統的なトリノのチョコレートとヘーゼルナッツ味ということらしい。
バニラは、この店のオーナーがインタビューでもバニラシードのことを取り上げていたのを思い出して、そんなに自信があるものなら、と頼んでみたのだ。

実際ここのアイスは口の中で広がる風味、香り、それと味を重視していて、その味の違いは一口目ですぐにわかる。だから店を出て最初のスプーンを口に入れた人たちの顔が 「 あれ? 」 みたいな顔に変わるのを見ているのがおもしろいくらいだ。

アメリカのスイーツがすべて合成香味料のような風味で、ほんものの香りも感じられないのに比べると、あきらかに日本人好みで素材にこだわって作られていると言う話もまんざら噂ばかりではない。店内に行くとわかるが、一人のお客さんの注文ごとにアイスクリームのふたを閉じる。
これも他のアイスのフレーバーが混ざったりせず、なるべくお客の口に行くまで新鮮な風味を閉じこめておきたいから、と言うことらしい。

チョコレートはあくまで深みがあり、バニラは、バニラエッセンスなんかとは全然違う新鮮な風味、またアプリコットはうまみの部分だけをそのままシャーベットに閉じこめたような、とにかく素材の個性が強くでたアイスクリームで、僕も評判になるわけがよくわかった。しかもこれがジェラートというのに、あのジェラートの持つどこか味の薄さは感じられず、あっさりとしながらもしっかりした風味ですっかり気に入ってしまった。

ここでは友人とバラバラのメニューを頼み、それぞれ味見をしてみたが、コーヒー味も僕のお奨めである。


GROM
公式サイト
http://www.grom.it/eng/index.htm

2165, Broadway
New York, NY
Tel 646-290-7233

地下鉄に乗って今度は Lower East Side へ。ここに来た目的は、ちょっと変わり種のアイスを求めてのことだった。
店の名前を il Laboratorio del Gelato といって、僕の貧しい想像力を使ってもこの名が 「 ジェラート研究所 」 と言う意味であろうと言うことはよくわかる。



僕らが着いたときは店内に客が一人もおらず、ここでいいのかな? などと思いつつ写真を撮っていると客が一組入っていった。
先ほどの店に比べると店構えも地味だし、この店があるエリア自体、ファンシーとは言い難い。こんなところで ( 失礼! ) でジェラートの名店が? と疑心暗鬼になりながらも店に入った。
この店のシステムもちょっと変わっていて、アイスクリーム ( ジェラート ) のフレーバーは80種類以上もあるらしい。が、店頭にあるのはそのうちの12種類ぐらいで、売り切れになるとそこに何か別の味が追加されたりと、常に全種類を頼める訳ではないようだ。最初それがわからずに壁に書いてあるフレーバーの種類から頼もうとすると 「 あ、そこから頼むのではなくて、この冷蔵庫の中のものから選んでください 」 と言われてしまった。


ここで僕が頼んだのは、ライチー、ブラックベリー、それにココナッツ。さっきの店と同じでミディアムサイズを頼むと3種類のアイスクリームを選ぶことができる ( もちろん一つの味を3スクープ分もらってもいいのだが )。
なぜかこの店でのフレーバーの選び方に代わり映えしないなぁと思われるかもしれないが、実は80種類の味の中には 「 タイのチリチョコレート 」 とか 「 米 」 とか 「 チェダーチーズ 」 などちょっとアイスに合うのかな? と思うようなものが並んでいる。直前に別のところでアイスを食べてきたからさっぱりしたものを食べようと思ったのと同時に、無難なものを、という心理が働いたのも事実だ。
それと本当に食べたかったアイスがこの日は無かったというのもある。実はこの店ではビール味のアイスがあるということを聞いていたのだ。なんでもどこかのレストラン向けに作り始めたこのアイスが評判となり、ここに店を構えるほどになったのだとか。

ちなみにほかにももちろん我が国代表のわさび味や、グリーンティ味もある。

さて味の方だが、あまりファッショナブルな場所とはいえないこの場所にあるとは思えないほど ( たびたび失礼! )、素朴ながら繊細の感じ。GROM も素材の風味を生かした作りという意味では、似たコンセプトだがあちらはどちらかというと極太、しっかりした風味で、それに比べるとこちらはもっと自然体な風味で、好意がもてる。
ここでも友人とそれぞれ味を変えて注文したのだが、その中では 「 オリーブオイル 」 が名前に反してとてもうまかったと、記しておこう。


入るときには行列など無かったのだが、僕らは運が良かっただけなのかもしれない。店を後にする頃にはすっかり行列ができていたのだから。


ちなみにこの日一緒に行ったメンバーの一人は、ここが気に入ってその後一人で二度も、通ったそうだ。モルツは無かったが、彼女が頼んだのはギネスビールアイス。苦みの中にも甘みがあっておいしかったとのこと。

il Laboratorio del Gelato 公式サイト
http://www.laboratoriodelgelato.com

95 Orchard St.
(between Broome & Delancey Sts)
New York, NY 10002

Tel 212-343-9922.


そして三軒目はもともと、Chinatown にある、Ice Cream Factory を考えていたのだが、周りの強い 「 お勧めしない 」 という意見に動かされ、ジェラート研究所から歩いて行くことができる、Pinkberry という、これまたニューフェイスのアイスクリームショップに変更となった。場所は SOHO である。
もともとカリフォルニアの LA を中心に展開してきたこの店が、最近は New York にも展開を進め、今ではここのほかに、Chelsea や 32nd Street の Korean Town にある。

この店もアイスクリームはジェラートだが、ジェラート特有のざらざら感とか淡泊な感じが一切無く、とてもクリーミーで口の中ですっと溶ける感じである。
さすがにここまでくるとみんなで一つずつは食べられなくて、大きなやつを一つ買ってみんなで分けることにした。
そもそもここはアイスにはこのクリームと、グリーンティの二種類しかない。この店の特徴は、アイスに乗せる新鮮なトッピングにある。ここではアイスに混ぜ込むのではなく、食べるときに口の中でフルーツの食感を楽しめることが売りのようだ。それだけにトッピングコーナーはとても充実していて、しかもどれもとても新鮮できれいなものばかり。一つずつ丁寧に選別している感じがあって、それが三店目のアイスクリームにも関わらず、食欲をそそるのである。

ここもある意味素材にこだわったアイスクリームといえるだろう。こちらも行列は覚悟の店である。


この店も注文の仕方が変わっていて、まずはレジの前のレジに並んで注文を住ませレシートをもらう。次にアイスクリームのコーナーに並び、注文したアイスを選ぶ。レジでお金を払うときに味を決めておくと、あまり待つことなくもらえるが、アイスクリームの前に来て選ぶようにすると余計に長い時間列に並ばなくてはならない。ちなみにレジで払った後アイスを受け取る行列に並ばずに待ってしまうと ( スターバックスのように )、いつまでたっても自分のアイスが出てこないので注意が必要である。


Pinkberry
公式サイト
http://www.pinkberry.com/html/pbmain.php

41 Spring St
New York, NY 10012
Tel 212-274-8883

さてこの日は全部で20種類ほどのアイスを食べたことになるのだが、三つの店は甲乙つけがたい。三つとも全く性格がはっきりと分かれて、それぞれに個性があるからである。
さらにびっくりしたのがこれらはすべてジェラートだったこと。一口にジェラートと言ってもこんなに違うものなのかと、改めて見直した次第である。

久々に甘いだけのスイーツでないものを味わうことができた一日だった。この様子だと、New York のスイーツシーンは少しずつ変わってきていると言えるかもしれない。

New York で流行る店が東京に進出ことが多くなっているので、そのうち東京で見られるかな?

2007年08月25日

iPhone Update その2

カテゴリー [ ガジェット ]


さて今回も引き続き iPhone 使用レビューのである。


本題に入る前に、不満点として一つだけ前回書き忘れたことがあるので、まず先にそのことを書いておこう。
書き忘れたこととはショートメッセージの機能のことである。

日本に僕が一時帰国すると、滞在中はおふくろの携帯電話を持ち歩くのだが ( もともと僕のアカウントだったものをアメリカ移住に際し、おふくろに名義変更してきたので、友人の多くはまだ僕の番号をキープしてくれているのだ )、日本に着いてとりあえず一息つくと、携帯電話の電話帳に残っている友人に連絡を取ることになる。
このときにアメリカでの癖で、ショートメッセージを使ってしまうのである。ところがドコモの携帯電話では、受信した相手に僕の名前も電話番号も表示されないらしく、匿名のメッセージとして届くらしい。けれども 「 今時日本でショートメッセージなんか使っている人なんかいないから、誰が送ってきたのか、すぐにわかった 」 と言われるのである。

実はアメリカでは携帯電話同士で連絡を取るときに、ほぼ100%、ショートメッセージが使われるのである。
メールだと送る相手のアドレスがわからないと送ることができないが、ショートメッセージは電話番号だけで送ることができるので、その気軽さが定着に一役買った。
加えてアメリカでは携帯電話会社が異なっているユーザ同士でも、電話番号だけでメッセージのやりとりができるのだ。携帯でメールをやりとりしているのはたいていスマートフォンユーザであり、そういう人でもメッセージの送り先が携帯電話であればショートメッセージを使う人が多い。

そのショートメッセージだが、iPhone に一つだけ注文をつけたい。
せっかく書いたメールも、ショートメッセージも、送信する段になってたまたま電波が届かない、というシチュエーションになることは多い。アメリカのほとんどの州ではきっと問題にならないかもしれないが、地下鉄が市民の足となっている大都市では、地下にいるために電波が届かない、という時間がそれなりに存在する。特に仕事や学校に遅れそうな朝や、仕事帰りに友人と待ち合わせに向かう途中に特にこういうメッセージを送りたくなるものなのだが、New York の地下鉄は東京と違って地下に電波が入らない。
それでも僕がこれまで使用してきた携帯電話は、書きかけのショートメッセージを Draft フォルダに保存しておく、と言う機能があって、容量の許す限り何通でもメッセージを用意しておくことができた。そうして電波が使えるところに着たところで、送信箱 ( Draft ) から一気に送信していたのだ。

ところがこの iPhone は書きかけのショートメッセージをしまっておくことができない。送信しようとしてたまたま電波の微弱なところにいたりすると、エラーとなって返ってきてしまい、処理を進めるには再度送信を試みるか、書きかけのメッセージを捨ててしまうしかないのだ。
これはなかなか痛い使用である。このあたりはソフトウェアのアップデートで柔軟な仕様に変更されるとうれしいのだが。

ちょっと話はそれるが、先日東海岸を局所的な大雨が襲った。New York はちょうど出勤前の時間で、雨は短時間しか降らなかったものの、地下鉄に流れ込んだ雨のせいで全線が不通になってしまった。それも数十分という単位ではなく、一日運休に路線もあれば、数時間で少しずつ走り出した路線もあった。が全体的にその日は午前中ほとんど人が移動できず、会社を休んだ人も多かった。
実はそのとき地下で待機してい電車の中にたくさんの人がおり、携帯電話で連絡を取ろうにもどこにもとれず、周りを心配させる事態になった。
このことを見直して、市議会議員などは地下鉄でも携帯電話が使えるようにすべきだと、MTA に申し入れをしていた。このニュースを見て、東京より十年近く遅れているんじゃないだろうかと思った次第だ。

さて不満な点はこれぐらいにして、実際のところそれ以外ではほぼ満点をあげても良い出来だと思う。


いままでもいろいろな携帯機器や PDA を購入してきたが、iPhone はその中でもっとも満足度が高い。たいてい購入した直後は所有欲が満たされて、それが満足度と勘違いすることが多いのだが、購入して2ヶ月近くなった今でも、使って非常に楽しい携帯機器であることには変わりない。
携帯電話の機能を○×で判断すると、すでに発売されている携帯電話とさして変わらない。が iPhone はユーザインタフェースがよく考えられていて、マニュアルを読まずとも基本的な機能を習得できてしまう ( 実際 iPhone のパッケージにはマニュアルが付属しない )。
日本で携帯電話を購入したときのことを思い出しながら書いているのだが、たしかちょっとした文庫本のようなマニュアルがついてきて、一通りの機能と、設定を終えるまでマニュアルが必要だった。特に記号と数字数桁の組み合わせで機能の選択ができるなど、マニュアルを常時持ってないとショートカットも使えない機種があったりして、それから考えると iPhone は全く次元が異なっている。

インターフェースの部分であるので、どこがどうよいのか、というのはなかなか文面では説明しにくい。本来それを説明するのならビデオに撮って YouTube などで公開したほうがよいのかもしれないが、そこまでマメでないのでここで簡単に説明しておこう。

iPhone の特徴はなんと言っても全面 LCD スクリーンとなっていてそれがタッチスクリーンになっている。上の写真でもわかるように、表はガラス、そして裏は金属というまさに sleek なバーである。突起らしい突起はほとんどなく、そのためキー入力は必要となるシーンにあわせて、適切なボタンが現れるようになっている。
たとえばフルキーボードだったり、ある時は電話番号用テンキーだったり。
フルキーボードも他社が実現しているような通常のキーボードでなく、さすがは Apple とうならされる機能が多く隠されている。
メールを入力するときなど、本文の表示をしながらキーボードを表示されるため、キーボードは「アルファベット」「数字と記号」「さらに別の記号」のようにキートップが切り替わる。その切り替えにはいわゆるシフトキーにあたるものがあってそれを一度タップすると 「 Q W E R T・・・」とならぶキーが「 1 2 3 4 5 ・・・ 」 などとなるのだが、数字を入力し終わった後にシフトキーをタップしないとアルファベットモードには戻らない。これはこれで使用として良いと思う。たとえば、メールで 「 My phone number is 123 456 7890 」などと入力するときは前半アルファベットで、後半は数字だけになるからだ。
ところが 「 Ok. I will see you there at 7pm.」というようにアルファベット中に数字が一つだけ混じるような文章では、シフトキーを押して入力モードを切り替えても良いのだが、「7」を押した後でまたシフトキーをタップしてからでないと「pm」の部分が入力できない。
けれども iPhone ではアルファベット入力で 「 ..there at 」まで入力した後、シフトキーをタップし、そのまま指を離さずスクリーンを滑らせて「7」を選択し、指を離すとそのときだけ数字の7が入力され、指が離された時点でまた英数字に戻っている、という案配なのだ。

これは単なる例で、こういった小さな気配りがあちらこちらで見られる。

もう一つ iPhone らしい機能を紹介しよう。
iPhone は電話でありながら、インターネットと iPod の機能が売りとなっている。そのため iPod には着いていないスピーカーが着いている。これはスピーカーホンとしても使うし、YouTube のビデオを再生するときに複数の人と見たいときなどにも使える。もちろん iPod 側に保存されている楽曲をスピーカーから鳴らすこともできる。
動画再生中でも音楽再生中でもいいのだが、ここに付属のステレオヘッドセットを指すと、画面上に表示されている音量を示すバーが伸び縮みするのである。
これはどういうことかというと、前回ヘッドホンで聴いていたボリュームを覚えていて、その音量に自動的に戻してくれるのだが、このときアニメーション効果を使うことで、ユーザにボリュームが変更されたことを告知する効果がある。
ヘッドセットと言えば、単純ながらこれも良くできている。最近の携帯は MP3 プレーヤーの機能付きというのが珍しくないので、ステレオヘッドが付属している。iPhone のそれは iPod に付属するヘッドセットと似ているが、ちょうど口元に小さなスイッチが着いている。言われなければ iPhone 専用と気づかない ( それがねらいだと思うが ) そのスイッチは全体がボタンになっていてクリック感がある。そこにマイクも内蔵されていて、もちろん通話も可能だ。
ヘッドセットのリモコンほどの機能は無いが、考えてみれば iPod の音楽を聴いてるときに電話がなったときにボタンがいくつもあるようなリモコンではとっさに迷ってしまうだろう。iPhone の場合はそれ自体がボタンなのでポケットの中にあろうが逆さまであろうが、手元に持ち出すことなくすぐに電話に切り替えられる。
このスイッチはクリックするだけしか機能がないので、複雑なことはできない。が、それでもワンクリックで音の再生を止め、ダブルクリックで次の曲の再生ができるなど、最低限の機能は使える。僕はリモコンならこれで十分ではないかと思う。それ以外は iPhone を取り出して、CD のジャケットをめくるように曲を選べばいいのだし、早送りも巻き戻しもシャッフルもすべてそこで可能なのだから。

・・・というように機能一つ一つにとても細かい配慮がなされていて、それがどれも自然に結びついているのが iPhone の特徴なのだ。

・アプリケーション

当初 iPhone が発表になったとき、搭載される OS は OS X がベースになり、Safari もそのまま移植されると高々と宣言された。それを聞いて、開発者や Mac ユーザはソフトの自由な開発環境が実現するのではないかと、大きな期待を持った。
が発売が近くなるにつれて、Apple から 「 iPhone 上のアプリは、ウェブアプリケシーションを作ってね 」 というアナウンスがあった。つまり iPhone の上でネイティブに実行されるアプリの開発環境は提供しないと言う意味だった。確かに今時のウェブアプリケーションはかなりのことができるが、それでもお世辞にも超高速とはいえない iPhone のネット接続速度だと、ウェブアプリケーションを実行するのはスピードの面でかなり制約を受けることになる。第一ネットが使えない環境ではそのアプリは実行できないことになる ( もう一度書くがそういうことは New York など高層ビルや地下鉄がいりくんだ大都市だけで、アメリカのほとんどの街では問題にならない )。
その発表があったときは開発者たちをかなりがっかりさせたのだが、実際に発売になるとそれは Apple の思惑どうりにはことは進まなかった。

早くから熱狂的なユーザたちに受け入れられた iPhone はすぐにユーザの手によるアプリケーションが開発されることになった。もちろん最初は Apple のいうような礼儀正しい、ウェブアプリケーションが登場した。
僕が当初からよく利用していたのが、下に紹介するサイトのものである。

http://www.mojits.com


MP3 プレーヤーから、チップの計算、数独までいろいろあるが、いかんせんやはりダウンロードして実行するまでに時間がかかる。バッテリもその間にどんどんなくなっていく。
そうしているうちに、案の定 iPhone のハックに成功した開発者たちがインターネットコミュニティを通して続々とネイティブアプリケーションを公開し始めた。
自由のきかないリングトーンに、自分の好きな曲を追加するソフトを始め、いまや数十ものアプリが取りそろえられ、しかもそれらをインストール/アンインストールするツールまで出てきた。
公開されているアプリの中には、Perl や Ruby などの開発環境をはじめ、ネットワークツールに、SSH、VTターミナルなど、それに任天堂エミュレータ ( そう、iPhone の上で任天堂ファミコンが実行し、マリオが動いてしまうのである )、DOOM などのゲーム、それにワープロからカメラを使ったテレビ電話、インスタントメッセンジャーに IRC チャットまでほとんど何でもそろってしまったのである。


iPhone GUI アプリケーション
http://iphone.fiveforty.net/wiki/index.php/GUI_Applications


Apple 自身、iPhone に搭載されているソフトの修正や機能追加などは iPhone を iTunes につなぐことでボタン一つで実現している。事実、Apple は発売後2度もファームウェアの更新を行っているが、iPod の音楽をインポートするのと同時に行ってしまうので、あれ?と拍子抜けするほど簡単なのである。
で上のように Apple が公式に認めていないアプリケーションがインストールされていると 「 いったん iPhone をリストアしないと先に進めない 」 と言ってファームウェアの更新に失敗してしまう。
がそんな心配は無用で、すぐに熱心な iPhone 開発者たちの手によってインストーラにパッチが当てられ、最新のファームウェア上でも何の問題なく実行できるようにしてしまった。


実は同じようなことは Pocket PC でもできるので、iPhone が初めてというわけではないのだが、それでも Mac 譲りのユーモアに溢れた、使っていて楽しいソフトがたくさん用意されるのではないかと、これからも期待できそうである。
前回バッタリーのことを不満としてあげたが、通常の電話として以外の機能で使うことが楽しいので、ついバッテリーが早く消耗してしまうのである。だからこれを Apple だけのせいにしてしまうのは酷というものかもしれない。
そのかわりもう一つ利点がある。
それは iPod アクセサリの流用が可能ということである。

出先で携帯電話のバッテリーが切れたときほど困ることは無い。同じ機種や同じメーカーの携帯電話を持っている人がいて、たまたま充電器を持っていてくれれば別だが、そういうことはまれである。
ところが iPhone の場合、iPod の USB ケーブルと同じものを使っているので、それさえあれば充電ができてしまう。
今やオフィスに iPod を持っていない人はいなくて、必ずあちこちに白いケーブルが転がっている。僕のオフィスなど、見渡しただけでも5~6本は見える。同僚が使っていなければ、ここにちょっと自分の iPhone をさして充電されてもらえば良いのである。これは計算外のことではあるが、とても助かっている。


さてアプリケーションの今後だが、これだけの熱意を Apple がどう受け止めるか、果たして今後のファームウェアでサードパーティのソフトのインストールを認めない方針をとるか、それとも一転して開発環境をオープンにして新しい世界をユーザと切り開いていくか、注目されるところである。


それにしても iPhone を取り巻く環境は常ににぎやかである。
今日も NJ 州に住む17歳の少年が iPhone ハックに成功し、SIM ロック解除に成功した話がニュースになっていた。
僕も YouTube でビデオを見たが、たしかに T-Mobile の SIM カードで動作していた。これが可能になると GSM をサポートした諸外国でもすぐにでも使えると言うことになる。

不謹慎かもしれないが、こんなニュースも iPhone の魅力ゆえ注目されているのではないだろうか。

二回に分けて長々と書いてきた独断レビューだが、また何かおもしろいトピックがあれば、その都度 iPhone を取り上げようと思う。

2007年08月21日

iPhone Update その1

カテゴリー [ ガジェット ]



6月29日に全米で発売された iPhone、使い始めてまもなく2ヶ月になる。
発売前後はメディアが大きく取り上げたせいもあって、ちょっとした騒ぎになったが今はその騒ぎも落ち着いて、すっかり携帯電話として定着しつつある。

iPhone 入手の狂騒も発売当日だけで、翌日からふらっと Apple Store や at&t ショップに立ち寄って持ち帰ることが出来るようになり、街中でも次第に iPhone を手にしている人をよく見かけるようになった。

アメリカでも携帯電話は契約時に1年とか2年のいわゆる 「 しばり 」 があって、その契約期間中はやみくみに携帯電話会社を変更することが出来ない。なので iPhone に関心があるんだけれども、まだ買えないと言う他社キャリアユーザは多いようで、まだ様子見の人も多そうだ。
僕も地下鉄の中で iPhone を使っていると、隣に座った見知らぬ人から iPhone の使い勝手について尋ねられることが何度かあった。

興奮冷めやらぬ購入時からしばらく経ったこともあって、iPhone の評価も冷静にできそうだ。
ちょうど良い機会なので気がついたことなどを少しまとめることにした。
思うところはいろいろあって、一度のブログでは書き足らないので、ちょっと無理矢理ではあるが二部構成に分けようと思う。


こういうときは通常長所から書くことが多いが、趣向を変えてまずは不満な点から挙げてみることにする。


・バッテリー持続時間が短い

誤解の無いように断っておくが、従来の携帯電話での使い方と同じ頻度、目的であれば十分合格点が与えられる。
つまり通話だけなら、2、3日は充電することなく十分に使える。
が iPhone ゆえの機能を使い始めるとあっという間にバッテリーが無くなってしまう。

・ネット接続速度

アメリカでもこのところ3Gの波がやってきてまだ数は少ないものの3Gネットワークに対応した携帯端末が売られるようになった。
ところが iPhone に搭載されているのは EDGE という、日本から比べれば旧世代のもの。2G である GSM を拡張した GPRS と EDGE は 3G の間に位置するものとして2.5G とか 2.75G などと言われることもあるが、そんなに3G には近くない ( あくまで体感速度 )。
おそらく3G ネットワークをサポートすると、同じ使い方をしていてもバッテリーの持ちが悪くなると言うことなので、第一世代 iPhone はスタイル重視から EDGE を選んだのではないかと想像に難くない。
むしろ3G が搭載されればよりインターネットの利用が快適になるので、通話よりインターネットサービスの使用頻度が増えて、同じ使い方にはならないはずである。とすればさらにバッテリーの持ちは悪くなり、朝満充電で出かけても夕方にはバッテリーがなくなる、なんてことになりかねない。このあたりがスタイル、重量、そして使い勝手のバランスの落としどころだったのではないだろうか。
実際どのくらいの速度が出ているのか、気になるところだが iPhone 内蔵のフルブラウザ Safari を使って接続速度を比べるサイトが出てきている。

http://i.dslr.net/tinyspeedtest.html
http://www.iphonespeedtest.com/
http://www.iphonenetworktest.com/

まあ回線、サーバ、ロケーション、時間帯など様々な要因によって結果は異なるので、一般的な解にはならないが僕が数回ためしたところではだいたい100Kbps~200Kbpsという数字が出た。そういう意味では FOMA の実効速度とそんなに変わらないのかもしれない。
これが iPhone に標準で搭載されているアプリケーションでどのくらい快適に使えるかというと、僕はかなり実用的なレベルではないかと思う。
ご存じ YouTube のビデオを見ることが出来る専用ヴュワーは、EDGE で接続しているか、それとも WiFi で接続しているかによってストリーミングビデオのビットレートが変わるので、ほとんど EDGE でも十分楽しめる。
また、天気予報やメールクライアント、それに株価情報なども早ければ二、三秒で確認が終わり、画面が再描画される。
また内蔵アプリである Google Map もさほどストレスを感じない。もちろんサテライトモードにして空中写真を拡大していっても速度は追随してくれる。これが WiFi 接続時であればあっという間である。

この接続速度が問題になるのは Safari を使って通常のウェブサイトを表示させるときだろう。
iPhone の標準ブラウザは OS X や最近では Windows 版もβがリリースされた Safari となっており、これが完全にフルブラウザとして働く。Adobe の FLASH ムービーの再生ができないことをのぞけばパソコン上のブラウザと機能の面で遜色無い。それだけにリッチコンテンツのサイトにそのままアクセス出来てしまうのだが、そういったときに EDGE では力不足の感が否めない。
重たいサイトともなるとアクセス開始してから、ダウンロード完了まで優に一分以上かかってしまう。
(僕はこの一分というのがイライラせずに待つことが出来る、結構重要なポイントではないかと思うのだ)
この New York Watch にアクセスしてどのくらいで表示が終わるのか試してみたが、EDGE 接続では画面に文字が出始めるのがアクセス開始から10秒後、そして全部表示されるのに50秒かかった。
これが WiFI 接続だと、文字が出始めるのが4秒後、そしてその数秒後には全画面表示完了するので、WiFi 接続が可能なところでは、PC 代わりに使えるといっても過言ではない。
問題は EDGE での接続を遅いと見るか、仕方ないとすべきか。

ただ回避策のようなものはある。
iPhone ユーザコミュニティサイトで紹介されていた方法だが、別に目新しいものではなくて、いわゆるプロクシのキャッシュを使うことで表示を高速化するのである。
Google はモバイル用に専用の検索サービスを提供しているが、ここを利用すると表示が圧倒的に早い。もちろんモバイル用と言うことでせっかくのフルブラウザながらモバイル用に合わせたレイアウトになってしまい、本来のサイトとは違った見え方になるが、広告写真のカットや、サイトに載せられている写真のサイズを最低限にすることで高速化を図っている。
使い方だが、下に示したサイトに Safari からアクセスし、検索キーワードの欄に、検索対象語のかわりにサイトURLを入れることで、Google がモバイル用にリサイズしてくれる。
どんな風に見えるかはパソコンでも確認できるので関心のある方は試してみて欲しい。(検索キーワードとして『nomeri.com』と入力して検索させると、New York Watch へのリンクが表示されると思うが、それをクリックするとここに載せている写真もリサイズされているのがわかるだろう)

http://www.google.com/m


さて長々と不満ともつかないようなことを書いてきたが、これらを補ってあまりあるほどのプラスな面が多い。
次回はその部分を紹介することにしよう。

2007年08月18日

ビルの谷間でビーチサウンド

カテゴリー [ エンタテイメント ]


Aruba、Jamaica、Bermuda、Bahama・・・・

今から20年以上前に大ヒットした歌の一節として出てくる地名である。
僕がその後カリブ海に関心を持つきっかけになった歌だ。


その歌とはトム・クルーズが主演した映画『Cocktail』の挿入歌、『Kokomo』のことである。歌っていたのは Beach Boys で、これが今から20年ほど前のことなのにその時点で20数年ぶりのヒット、と呼ばれていたのだから、いかに息の長いグループかこれでわかるというものである。
きっと親父たちの世代が Beach Boys をリアルタイムに感じていたのではなかったか。

いずれにせよ、当時はときどき Beach Boys の古典ヒットをラジオで聞くぐらいで、メンバーがどういう面々なのかは Kokomo のヒットまで知らなかった ( 知らなかったし、あまり興味もなかった ) のだが、初めて写真で彼らの姿を見たときはびっくりした。ボーカルとそのメロディーから想像していたのと違って年配の面々によるバンドだったからだ。唯一ボーカルだけが若い人だったが、それはあとでオリジナルのメンバーでは無いと知った。

まあ Beach Boys についてはそこまでの興味だったが、この歌の中で出くる不思議な音の響きを持つ地名に、どこか憧れた。
当時カリブといえば、ディズニーランドの 「 カリブの海賊 」 アトラクションがすでにあって、そのイメージからどこか南の海域なんだろうな、ぐらいの前知識しか無かった。先の映画の出来はともかく、その映画に出てくる海の美しさや、カリブらしいゆったりとした時の流れ、そしてこの歌の持つイメージからカリブに対する期待が大きくなっていった。

それから何年もたって、アメリカに住むようになると New York からカリブ海へは意外とアクセスが便利なことがわかり、バハマを足がかりにして、その後カンクンやケイマン諸島、プエルトリコ、ドミニカン共和国など、毎年のように訪れるようになった。ここでスキューバダイビングのライセンスを取ったことも、カリブ諸島への距離感をより短くしたのだろう。


ごみごみした高層ビルの街、New York から飛行機に乗り、数時間後に真っ青なトロピカルアイランドが見えてくると、いつも Beach Boys の 「 Kokomo 」 のサビフレーズがずっと頭の中でリピートするのだった。
それくらいカリブ海の島々を訪れるのは、毎年の楽しみになっていった・・・

そして昨日の朝、ひょんなことから Beach Boys のビーチサウンドを New York の街中で耳にすることになった。
たまたまこの日はこの近くで写真を撮る必要があって、Bryant Park を通り抜けようと駆け足で入っていった。約束の時間に少し遅れそう、と慌てていたのだが、どこか懐かしいサウンドが耳に入ると、自然と駆け足をやめ、その音のする方に向かって歩き始めた。

それほど大きくない Bryant Park の端に特設ステージができており、そのステージで歌っているグループが往年の Beach Boys だったのだ。

ステージに見る彼らの顔は、僕にとってはどれも初めてのもので、「やっと会えた」という気持ちにはなれなかったが、スピーカーから聞こえてくるその歌声は間違いなく20年前の Kokomo のそれと同じである。
それまで汗をかきながら走っていたことも忘れて、さわやかな夏の朝のひとときを楽しんだ。
約束のことが無ければ、最後まで聞いていたかもしれないが、残念ながらそういうわけにはいかず、一曲演奏を聴いた後に再び小走りで公園を後にした。

高層ビルとビルに囲まれた都会の街はクラクションの洪水で溢れていたが、頭の中はカリブ海の青い海のイメージとビーチサウンドがこだましていたある朝のことだった。
またカリブ海を訪れてみようかな。



※ 時間が無かったので広角レンズのまま、撮影。ちょっと遠く見えるのはそのせいだが、実際にはすぐ目の前という感じ。


※ 上の写真は熱狂しているファンでいっぱい、のようなイメージだが実際にはこのぐらいの人しか周りにはいなかった。平日の朝だったので、人出が少なかったのもあるだろう。ごらんの通り、これはテレビ局主催のミニコンサートで、生中継で『Good Morning America』で全米に放映されていた。
砂浜の様に見える地面は、実は砂浜を摸したカーペットで、そこにレジャーシートをしいてビーチにいるかのようにくつろぎながら聞いている人も。

2007年08月13日

不自由な女神

カテゴリー [ on the street ]



自由とはどこまで自由であるべきなのだろうか。

「自由」と言う言葉の音の響きはとてもシンプルだけど、つきつめて考えると自由というのは難しい。

案外しばりのある自由のほうが現代人には都合がよいのかもしれない。

2007年08月10日

Harry Allen

カテゴリー [ エンタテイメント ]



少年時代、サックスを吹いていた時期があった。
最初はバリトンサックスという大きなサックスで、首に巻き付けたストラップがずっしりとくいこんだ。その次に手にしたのがテナーサックスだった。
何事も中途半端な僕は、うまい、と言われるほどまで上達することはなかったけれど、今でもサックスを見たり、音色を耳にするとあの当時のことを懐かしく思い出す。


Village にある小さなジャズライブハウス。
中にはほんとうに小さなバーがあり、その泊まり木の向こう側にはバーテンダーの女性が、生の楽器の音を邪魔しないようにと気遣いながら、そっとグラスに酒を注いでいる。
そのぐらいステージと客席が近いこの場所で、今夜演奏するのは Harry Allen。


目の前に立っている、その Harry Allen はまるでサックスで歌っているかのようだった。力強く、そしてやわらかいその音は、地下にある狭い客席にしみこんでいった。
こんなときはファインダーをのぞくのが憎らしくなる。僕の場合、ファインダーをのぞいていると周りの音がさっと聞こえなくなるのだ。


写真を撮ったあとはカメラを氷の入ったグラスに持ち替え、目をつむって、そして、再び心地よいジャズのリズムに身を委ねるのだった。
それは New York で聞く、どこか懐かしい音だった。


※Harry Allen 氏は11月に富士通の招きで来日の予定があるようだ

2007年08月07日

店主敬白

カテゴリー [ Random Thoughts ]


海外旅行に行くと小銭がよく貯まる、と耳にするが僕の場合は New York 長く住んでいても小銭がよく貯まる (笑)。多くの場合、それはたいてい慣れない外国で、細かい端数をコインで支払うのが難しいことから来ている。
コインに刻印されている数字を確認するまでは、それが1なのか5なのか10の単位のものなのかわからず、どのコインを使えばいいのか選ぶのに躊躇するからだろう。アメリカのコインだって5セントと10セントと25セントは銀色であるが、この中では10セントが一番小さい。僕も、一番最初にアメリカに来た頃、5セントのコインを見て10セントより価値があるコインだと勘違いしたことがある。


それからしばらく経ちだいぶコインに見慣れたあともデリやスーパーなどでなるべく小銭を使おうと努力していたが、いくら使っても財布の中から小銭が減らないのですっかりあきらめてしまった。
たいてい出かける前に財布が重いと小銭だけを取り出して、家に置いていく。そうこうしているうちに家の中には小銭の山が出来てしまった。

こうして、貯まると迷惑な小銭だが、その中でよく使うものがある。それが25セントコイン、クォーターである。
パーキングメーターやコインランドリーの中には今でもクォーターしか受け付けないものが多く、僕もこれだけは他の小銭と分けてキープしている。
なので釣りをもらうときはなるべくクォーターが含まれるように、こちらも暗算して小銭を渡すのだが、キャッシャーで怪訝な顔をされることが多い。
たとえば$4.77の買い物をしたときに、$5紙幣を渡せば23セントの釣りだが$5と2セントを渡して25セントコインをもらおうとすると、「5ドルで十分よ」と言われて2セントを受け取ってもらえないのだ。そしてまたしても23セントもの小銭をじゃらじゃらと渡されるのだが、こういうときに無理して「いいから、レジに打ち込んでよ」とこちらから頼むと25セントの釣り金額が表示され、「なるほど」という顔をされることもある。
ところがレジにきちんと打ち込む店ばかりではなく ( きっと税金対策なのだろう )、そうすると暗算のできないアメリカ人は、混乱してしまいには面倒なことをしてくれた、と怒り出したりするから始末が悪い (笑)。

そうこうしているうちに堆くたまっていく一方の小銭だが、日々わずかながら抵抗を試みている。

たとえば通勤や通学の途中でよく立ち寄るコンビニやコーヒースタンドで、買っていく物がパターン化しているという人は意外と多いと思う。缶コーヒーとパンとか、お茶とおにぎりと言った自分なりの定番メニューが知らず知らずにできあがっているものである。
同じところでいつも同じものを買っていると、それがたとえ合計金額にセールスタックスの値段が加わってぴったりした、覚えやすい数字ではないにしても、それを繰り返しているうちに覚えてしまう。
そこで僕も 「 今朝はあそこのデリでソーセージマフィンを食べよう 」 などと釣りの出ないようにぴったりの金額を用意するのである。

ところがいつものように釣りのでないように紙幣と小銭でぴったりのお金を渡すと、足りないと言われることがある。
おかしいな、昨日まではこの値段だったのに・・と思って聞くと今日から値上げだという・・・

店内の値札を見ると確かに値段が変わっている、が 「 値上げしました 」 という案内はまず見かけない。
こういうことは New York では割と当たり前のように起きていて、毎日行く店で無い限り値上げしたことに気がつかないだろう。多くの場合 「 あれ? 値段が変わったような。前はいくらだったっけ 」 ぐらいにしか感じず、あれほど習慣的に払っていたのについ頭の中からその記憶がすっぽりと抜け落ちてしまうのだ。


僕が育った東京の下町で値上げと言えば、店側にとってすれば一大事だったのではないだろうか。
街を歩いているとこんな張り紙に遭遇したことも珍しくない。

「同じ値段で○○年やってきましたが、昨今の物価の上昇に伴いやむを得ず価格を改定させていただくことになりました。店主敬白 」


こんな風に、長くその土地で商売をやってきた個人店主ほど値上げに対する抵抗はあるようで、こういった告知を目にすることが多い。
翻って僕が住んでいる New York だが、今まで 「 値上げしました 」 の案内を店先で見たことなぞ一度もない。
上述の通り、店はある日突然価格を改定していることが多いのだ。
アメリカに旅行で来た人がよく 「 アメリカってサービスがいいですね 」 と口にするが、果たして消費者にとって真のサービスと言えるのはどちらだといえるだろうか。


今月より Starbucks コーヒーの商品が値上げになるとニュースが伝えていた。
値上げはどこでもやっているけれど、Starbucks の値上げがメディアで取り上げられているのには訳がある。なんでも今回の値上げは、今年二度目のことらしい。
しかも1997年 ( 1995年だったかもしれない。会社帰りのジムで、トレッドミルで走っていたときに備え付きのモニターでニュースを見ていたので細かいところまで覚えていない ) より数えて今回の値上げはなんと7回目だとか。
その際メディアは興味深い統計データを示していた。2001年に初めて Starbucks を利用した人の平均年収は$92,000だったものが、昨年のデータでは$80,000まで下がっているとのこと。
つまりより Starbucks がなじみ深いものになり庶民の飲み物になりつつある、ということで今後は値上げに関しても注意を払わないと行けないということらしい。
でも本当に僕が驚いたのは、高所得な人ばかりが Starbucks を利用しているという事実である。



値上げ直後 Starbucks に行く機会があったが、やはりどこにも値上げの案内は無かった。

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