Harry Allen

少年時代、サックスを吹いていた時期があった。
最初はバリトンサックスという大きなサックスで、首に巻き付けたストラップがずっしりとくいこんだ。その次に手にしたのがテナーサックスだった。
何事も中途半端な僕は、うまい、と言われるほどまで上達することはなかったけれど、今でもサックスを見たり、音色を耳にするとあの当時のことを懐かしく思い出す。
Village にある小さなジャズライブハウス。
中にはほんとうに小さなバーがあり、その泊まり木の向こう側にはバーテンダーの女性が、生の楽器の音を邪魔しないようにと気遣いながら、そっとグラスに酒を注いでいる。
そのぐらいステージと客席が近いこの場所で、今夜演奏するのは Harry Allen。
目の前に立っている、その Harry Allen はまるでサックスで歌っているかのようだった。力強く、そしてやわらかいその音は、地下にある狭い客席にしみこんでいった。
こんなときはファインダーをのぞくのが憎らしくなる。僕の場合、ファインダーをのぞいていると周りの音がさっと聞こえなくなるのだ。
写真を撮ったあとはカメラを氷の入ったグラスに持ち替え、目をつむって、そして、再び心地よいジャズのリズムに身を委ねるのだった。
それは New York で聞く、どこか懐かしい音だった。


※Harry Allen 氏は11月に富士通の招きで来日の予定があるようだ
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