2009年2月アーカイブ



※ Canon EOS 5D Mark II


「 葉巻をふかす八百屋 」


キューバで写真を撮っていてもっとも印象に残ったのは市井の人々とのふれあいだろう。
僕の話すカタコトのスペイン語にも辛抱強くつきあってくれた、多くの人たち。
カメラを向けると老若男女問わず、皆照れくさそうにはにかむのだけれど、写真を撮られるのはまんざらいやでもなさそうだ。

路上市場で見かけた八百屋の親父は、見事な葉巻をくわえながら撮影に応じてくれた。そういえばキューバといえば葉巻の名産地で知られているが、葉巻はともかく確かにたばこを吸っている人は多い。

メキシコからキューバの国際空港に着き、イミグレーションへと移動する空港建物を移動しているときから早速たばこのにおいが充満していたのが、強く印象に残っている。
何せ米国は建物の中で喫煙できるところなんてないし、まして空港のような公共の屋内などもってのほかだからかである。

もちろんたばこが体に良くないことはわかっているけれど、民主主義の国では喫煙が不自由なのに、社会主義国のキューバが却って自由なのがなんだか可笑しい。


ちなみにたばこが高級嗜好品かというとそんなこともなくて、キューバ人向けの安価なたばこが流通していた。試しにと僕も一本もらって口にしてみたのだけれど、たしなむ、どころではなかった。あまりにも強くて最初の一口だけで頭がくらくらしてしまうのだ。
なにせフィルターなんてものはついていない。


旅の思い出は少しずつ薄れていくのだけれど、キューバの色とにおいと言えば葉巻とかラム酒からくるものであり、僕の中ではそれはアンバーでほろ苦いものとして脳裏にまるで残像のように焼き付けられている。
それは決して不快なものではなく、むしろキューバを訪れたという証といった方が近い。
再びこの地を訪れることがあれば、きっと最初の旅のこと懐かしく思い出すことだろう。



※ Canon EOS 5D Mark II


「 往来 」

2008年末、前日にチケットを手配して行ったキューバ。
現在、このブログではこのときの様子を紹介中。前半にちょっとした近況、続いてキューバに関する記事というスタイルで当面続けていく予定。


New York の2月ともなると、春を思わせる暖かい空気をほんの一瞬感じることがある。ときにはそれが瞬間、といった幻の様な風ではなく、丸一日穏やかという日もあるのだが、その一方で今日のようにみぞれまじりのぐずついた天気で思わず身震いするような寒さがぶり返すから、油断がならない。
そのせいか、昨日から鼻までくずつきはじめどうも集中心に欠けるようだ。
今日はこれを書き上げたらさっさと熱い湯につかってベッドにもぐり込むことにしよう。

さて今回のトピックは 「 食 」 である。
僕の知人友人は、僕がかなりの食いしん坊な人間だということを知っていると思うが、ここはやはりこの話題を取り上げずにはいられない。

※ハバナ旧市街のレストランで食べたポークソテー。この後の写真にも出てくるがフライドスイートポテトがよく出てきた。僕は特にこれが気に入った。


他の人も同じだと思うが、旅の醍醐味の一つはなんといっても食事だろう。その中でも僕は特にローカル色豊かな食文化に憧れのようなものを持っているので、出発前の情報集めに食に関する事柄が外せない。
だから旅行客向けにテイストを変えているようなレストランにはどちらかというと興味がわかないのである。

キューバ、というちょっと特殊事情を持つ国ではあるが、New York 近郊にはキューバ系移民のコミュニティもあるし、キューバンレストランも数多くあるから、想像すらできないというほどではない。僕のアパートメントのすぐ近くにも一軒、キューバンレストランがあって時々利用するくらいだから、どちらかというと馴染みがあるといった方が正しいかもしれない。
その中でも特にキューバンサンドイッチといえば数あるサンドイッチの中でメジャーな種類の一つに数えられるほど、よく知られている。
またカリブ海の他島、Puerto Rico や Dominican Republic などと並んで米と豆、つまり Rice and Beans を主食にしているのも特徴で、ラテン文化といいながら意外と日本人の舌にはよく合う ( と僕は思っている )。


ところがインターネットで調べてみると、個人のブログなどでは 「 キューバの食事は不味い 」 という記述がいくつか見つかった。
それについては 「 きっとキューバは極端なモノ不足に陥っているというから、食材も十分に手に入らないのだろう 」 などと出発前から半ば覚悟を決めていたのだった。
New York に住むキューバ人の友達からは 「 コーヒーだって十分に手に入らないから、中には食用の豆をコーヒー豆に混ぜて煎っているところもあるくらいだ 」 などと驚かされていれば、誰だってそう思うだろう。なにせ十分な情報が手に入らない国なのだ。


そしてキューバに到着。早速ハバナの街を歩きながら見つけた旅行客向けのレストランに入ってみた。なにせ最初からローカルな食堂に入る勇気はなかったのだ。
メニューに並ぶランチの値段は New York のカフェのメニューに並ぶものより、数十%ほど安いという程度で格安と言うことのほどのこともない。載っているメニューもピザやサンドイッチなどアメリカで食べられるものとさほどかわらないが、その中でなんとなくキューバらしいものを一つ選んで注文してみた。確か値段は米国ドルにして7ドルくらいのチキンのソテーだっただろうか。
( ちなみにハバナ市民にはなぜかピザが人気らしく、あちこちで子供たちがプレーンのピザを食べているのを見かけた )

※キューバに着いて初めて入った外国人向けのレストランでの食事。無造作に盛りつけられた鶏肉だが、意外にもこれがおいしいんである。


ウェイターが運んできたのはお世辞にもきれいに盛りつけされているとは言えず、どちらかといえば無造作に皿に盛っただけ、という感じでそれは出てきた。先に書いたように、キューバでの食事に期待してはいけないと覚悟を決めてきたこともあって、落胆はしなかったけれども。
見たところライスはなんとなくぼそぼそだし、添えてあるサラダもわずかなキュウリとレタスでまあこんなもんか、と思いながら最初の鶏肉一切れを口にしたところ、その印象は 「 あれ? 」というものに変わった。味付けは簡単なものながら、鶏肉はとてもジューシーでしかもきちんとした歯ごたえがあり、噛むごとにおいしい鶏の味が舌に伝わってくる。
バターやクリームを多用した豪華な味付けでない分余計に素材の味が活きているという感じで、アメリカで普段食べるパサパサした肉とは大違いだ。むしろアメリカで食べているのは素材ではなくて調味料でないかと思えてくるほど。

この印象はその後に利用した食堂や売店の軽食でも同じだった。
僕にはどちらかというとキューバの食事がうまいとすら思えてくる。

ではどうしてそうなのだろう、と考えるとそれはもしかするとこんなことなのかもしれない。
キューバがモノ不足なのは事実で、日常生活に必要なものは一通りそろうにしても、農業や畜産などまだ工業レベルの生産体制は整っていないのだろう。つまり農薬も十分にないかもしれないし、鶏もアメリカのブロイラーのように育てることはないのではないか。卵も照明を何度も切り替えて多く産ませることは難しいかもしれない。なんといったってつい最近まで電力の供給が不安定な国だったのだから。
そう考えると農業も畜産も昔ながらの方法で、それはある意味オーガニックに近いのではないかと。
未だに卵なども配給制とのことで、「 今月の卵はこれだけ 」 というものを見せてもらったが、それはアメリカでいうところの Extra Large サイズで、その卵で作った卵焼きというのはアメリカで口にするあまり味のしないものとは大違いだった。どうりでハバナで食べたフランはどれもおいしかったわけだ。

※ビーチ沿いの売店で頼んだハムのサンドイッチ。通称「ハモン」。ここのフライドスイートポテトも揚げたてでうまかった。パンはお世辞にもふわふわとは言えないけれど、ハムの味はしっかり。奥に見えるパイナップルジュースももちろん100%ナチュラルでものすごく甘い。


そのあと僕は外国人旅行客向けのレストランにももちろん行ったし、ローカルなキューバンに連れられて市民向けの安食堂にも行ってみたが、まずい、という体験は一度もなかった。
出発前に読んだ旅行記で書かれていた 「 不味い 」 というのは、おそらくスパイスやバター、それにファンシーなソースでデコレーションされた料理に慣れてしまい、食材の味がわからなくなってしまったアメリカ人の見方なのではないだろうか。
そう考えると本来豊かだと思っていた僕らの世界の方が、食材を工業製品のように大量生産され、そのあげくに偽装問題や農薬混入など本来心配しなくてはよいはずのことに頭を悩ませているのではないか。その一方、世界中の珍味など入手はできないものの食べ物本来の味わいを感じられる食事ができるキューバのような国が果たして不幸せと言えるのか。
これは旅を通して大いに考えさせられることになった。

たかが食、されど食なのである。


※キューバ人の友達が連れて行ってくれた二人しか入れないような小さな食堂。朽ち果てそうな共同住宅の2階にあって普通なら絶対に見つけられないようなところだったが、ここの圧力鍋で料理した鶏肉も何とも言えずうまかった。貧しいとはいえキューバの各家庭には圧力鍋がかならずといっていいほど使われているようだ。一番上の写真にも出てくるが、出てくるトマトはどこも完熟モノでとても甘いのが印象的だった。



※ Canon EOS 5D Mark II


ちょっと昔のガイドブックを読むと、ハバナ市民の交通の足となっているバスは車体が古く、いつ来るかわからず、来てもぎゅうぎゅうで乗れないので、旅行客はタクシーを使うべき、という記述が見つかる。
ところが2008年末の様子はすっかりそれとは違っていて、バスは頻繁にやってくるしバスの車体は決して古くもない。外国人観光客向けのバスだろうが、中には New York で見かけるような大型コーチバス ( 下にスーツケースが納められるスペースがあり、乗客は快適なリクライニング付きシートがあてがわれる ) まで走っており、僕の予想とは大きく違っていた。
おそらくバスが安定運行できるようになったのは、反米路線を取るベネズエラがキューバにオイルを安価に供給するようになったためだし、また真新しい大型コーチバスは中国からの提供によるものだった。
僕もキューバ市民に混ざって路線バスに乗ってみたが、好奇心からくる他の乗客からの視線が気にならなければ、決して悪いものではなかった。
それでもどこをどう走るのか、旅行客には路線が全くわからないし、英語で尋ねる訳にもいかないから、よほど乗り場と降りるバス停のことが頭に入っていないと利用するのは不便だろう。

そこで自ずとタクシーを多用することになるのだが、これまたタクシーにいろいろあってどれを利用するかでまた一悩みする。

上の写真は、そんなタクシーの一つで、通称 Coco Taxi と呼ばれるものだ。見ての通り、ココナッツに見えることからこう呼ばれるのだろう。
利用するのはたいてい旅行客で、メーターもないから行き先を告げて値段を交渉することになる。とはいえ運転手も公務員で、客は主に外国人だから多少の英語はお手のもの。
乗れるのは客二人までで、荷物も膝の上でしっかりつかんでいないと人間もろとも振り落とされてしまうような荒い運転なので、荷物があるときや長距離で乗るには向いていないが、その分機敏な動きで狭い路地もものともしない。

後ろから見るとこんなにかわいらしいのに、爆走音を立てて白い排気ガスを噴出しながらぶいぶい走り回る様はどう見てもアンバランスだが、それが何とも可笑しい。



※ Canon EOS 5D Mark II


「ハバナの郵便配達夫」


後ろに見えるのは郵便局の自転車で、シャツの色と自転車の色からみてどうやら「青」がシンボルカラーなのだろう。

それにしてもキューバの人たちは一声かけると皆気軽に撮影に応じてくれる。中にはこちらが頼まなくても向こうから頼んでくることも。
彼もカメラを向けるとすぐに OK をくれた。

こんな風にユニフォームを着ている郵便局員が公務員というのは、すぐにわかるのだがこの国はたとえレストランのシェフであっても、タクシーの運転手であっても、バーテンダーであっても皆、公務員なのである。
だからといって規律が正しいかというと、そこはやはりラテンの血が流れるキューバンらしいおおらかさが随所に見られるのである。



※ Canon EOS 5D Mark II


砂浜に打ち上げられた椰子の実。
東京育ちの僕には、この風景はあくまで想像上の世界だった。


常夏の島、と思っていたら12月の海は天候と同じくそれなりにマイルドで、冬とはいわないまでも海で泳ごう、なんて人はいなかった。

それでもキューバの海を見たくなる。
この海がこの地を遙か遠い異国にさせている。
この椰子の実はどこまで行って、何を見てきたのか。


ところでもう2月になってしまい、いつまでもキューバの写真ばかりというのもいい加減食傷気味だろうか?
そんな声が聞こえてくればこのシリーズもそろそろ終わりにしようかと思う。



※ Canon EOS 5D Mark II


生まれてから一度も見たことがないクルマなのに、なぜか惹かれる旧いデザイン。
入手できる情報もマテリアルも限られているというのに、今でも修理しながらしっかり走っている。
白煙をあげながら疾走する様は、環境に良くないのだろうけれど、今彼らがハイブリッドカーを手にしてもきっと直して使い続けるのは難しいだろう。旧いクルマの方が直しながら長く乗り続けられるということもあるだろう。

本当のエコの意味は難しい。

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