ビルの谷間でビーチサウンド
Aruba、Jamaica、Bermuda、Bahama・・・・
今から20年以上前に大ヒットした歌の一節として出てくる地名である。
僕がその後カリブ海に関心を持つきっかけになった歌だ。
その歌とはトム・クルーズが主演した映画『Cocktail』の挿入歌、『Kokomo』のことである。歌っていたのは Beach Boys で、これが今から20年ほど前のことなのにその時点で20数年ぶりのヒット、と呼ばれていたのだから、いかに息の長いグループかこれでわかるというものである。
きっと親父たちの世代が Beach Boys をリアルタイムに感じていたのではなかったか。
いずれにせよ、当時はときどき Beach Boys の古典ヒットをラジオで聞くぐらいで、メンバーがどういう面々なのかは Kokomo のヒットまで知らなかった ( 知らなかったし、あまり興味もなかった ) のだが、初めて写真で彼らの姿を見たときはびっくりした。ボーカルとそのメロディーから想像していたのと違って年配の面々によるバンドだったからだ。唯一ボーカルだけが若い人だったが、それはあとでオリジナルのメンバーでは無いと知った。
まあ Beach Boys についてはそこまでの興味だったが、この歌の中で出くる不思議な音の響きを持つ地名に、どこか憧れた。
当時カリブといえば、ディズニーランドの 「 カリブの海賊 」 アトラクションがすでにあって、そのイメージからどこか南の海域なんだろうな、ぐらいの前知識しか無かった。先の映画の出来はともかく、その映画に出てくる海の美しさや、カリブらしいゆったりとした時の流れ、そしてこの歌の持つイメージからカリブに対する期待が大きくなっていった。
それから何年もたって、アメリカに住むようになると New York からカリブ海へは意外とアクセスが便利なことがわかり、バハマを足がかりにして、その後カンクンやケイマン諸島、プエルトリコ、ドミニカン共和国など、毎年のように訪れるようになった。ここでスキューバダイビングのライセンスを取ったことも、カリブ諸島への距離感をより短くしたのだろう。
ごみごみした高層ビルの街、New York から飛行機に乗り、数時間後に真っ青なトロピカルアイランドが見えてくると、いつも Beach Boys の 「 Kokomo 」 のサビフレーズがずっと頭の中でリピートするのだった。
それくらいカリブ海の島々を訪れるのは、毎年の楽しみになっていった・・・
そして昨日の朝、ひょんなことから Beach Boys のビーチサウンドを New York の街中で耳にすることになった。
たまたまこの日はこの近くで写真を撮る必要があって、Bryant Park を通り抜けようと駆け足で入っていった。約束の時間に少し遅れそう、と慌てていたのだが、どこか懐かしいサウンドが耳に入ると、自然と駆け足をやめ、その音のする方に向かって歩き始めた。
それほど大きくない Bryant Park の端に特設ステージができており、そのステージで歌っているグループが往年の Beach Boys だったのだ。
ステージに見る彼らの顔は、僕にとってはどれも初めてのもので、「やっと会えた」という気持ちにはなれなかったが、スピーカーから聞こえてくるその歌声は間違いなく20年前の Kokomo のそれと同じである。
それまで汗をかきながら走っていたことも忘れて、さわやかな夏の朝のひとときを楽しんだ。
約束のことが無ければ、最後まで聞いていたかもしれないが、残念ながらそういうわけにはいかず、一曲演奏を聴いた後に再び小走りで公園を後にした。
高層ビルとビルに囲まれた都会の街はクラクションの洪水で溢れていたが、頭の中はカリブ海の青い海のイメージとビーチサウンドがこだましていたある朝のことだった。
またカリブ海を訪れてみようかな。

※ 時間が無かったので広角レンズのまま、撮影。ちょっと遠く見えるのはそのせいだが、実際にはすぐ目の前という感じ。

※ 上の写真は熱狂しているファンでいっぱい、のようなイメージだが実際にはこのぐらいの人しか周りにはいなかった。平日の朝だったので、人出が少なかったのもあるだろう。ごらんの通り、これはテレビ局主催のミニコンサートで、生中継で『Good Morning America』で全米に放映されていた。
砂浜の様に見える地面は、実は砂浜を摸したカーペットで、そこにレジャーシートをしいてビーチにいるかのようにくつろぎながら聞いている人も。






















