
毎日使わない日本語は脳の中でもどこか遠い場所に格納されてしまうかのようで、僕の場合たまにボキャブラリをフルに使おうとするとまるでど忘れした人のような言葉遣いになってしまう。忘れてしまうのは言葉だけではなく、実は自動車や鉄道などのマップもそうなのだ。
昔は地図など見なくても東京都内の乗り換えはすぐに頭の中で見当がついたし、乗換駅でも頭上の案内を見ることなくスタスタと歩いて行けたものだ。
ところが最近の一時帰国では、都内の地下鉄/JR駅乗り換えにかなり手間取った。なんだか帰る度に迷子になる率が上昇している気がする。
僕が住む、New York も地下鉄網は発達していて、それこそほぼ毎日使っている。なんといっても僕のアパートで地下鉄の振動を感じるほど身近なのだ(笑)。 これまでに仕事で長期滞在した英国や、バケーションで行ったフランスなど、それぞれの首都の地下鉄を使ったことがあるが、東京の交通機関が特に複雑に見えるのは、営団 ( ってもういわないんだっけ? )、都営地下鉄、それに私鉄の乗り入れ、それにJRを駆使しないといけないからかもしれない。
果たして僕が毎日使う New York の地下鉄より東京の方が本当に複雑なのだろうか。
ちょっと気になって総駅数について調べてみると、面白い結果が出た。おそらくこのデータは最新ではないものの、それほど大きな増減は無いものとして見ていくと New York の MTA の全駅数が 468 であるのに対し、東京は、
東京メトロ 168駅
都営地下鉄 106駅
ということで New York の地下鉄の方が断然駅数が多い。
一方 New York には郊外から乗り入れる長距離通勤列車をのぞくと、JR に対応するような地上の交通鉄道網がない。そこで Manhattan とほぼ同じ大きさの23区内の総駅数 ( JR・私鉄含む ) について調べてみると、だいたい470駅前後らしいということがわかった。こうなると東京の駅は New York のそれと比べてほぼ同数であることがわかる。ただし New York の地下鉄の場合、468駅には Manhattan 以外の区、たとえば The Bronx や Queens のものも含まれており、そうなると東京23区より広い範囲をカバーすることになるので、単純に比較はできないのだが。
New York の地下鉄が旅行者に取っても使いやすいと言われるのは、Manhattan 内では一部の地下鉄ラインを除き、多くが南北にしか走らないことにある。南北に走るラインが多いのは Manhattan が細長い島であるという地形によるところが大きい。それに対して東京の場合は線が複雑に入り組んでおり、これに JR や私鉄を加えて距離や運賃の比較まで行わないといけないとなると、どう選んで良いのか迷ってしまい、それが結果として取っつきにくさにつながるかもしれない。
まあその一方価格やサービスの面で競争が行われているわけで、New York のように MTA という組織がバスも地下鉄も郊外型通勤列車も管轄しているのとは大きく異なる。
New York の地下鉄を一度でも利用したことがある人ならわかると思うが、24時間運行という唯一の利点をのぞくとサービスという言葉自体存在しないように思える。この街に住んでいる以上、不満を書き並べたところでサービスが良くなるわけではないのだが、不便なことは不便だとはっきり伝えることが改善につながることもあるので、ここに一例を紹介するがその例については枚挙に遑がない。
駅に案内をする駅員がいない。遅延や事故などアナウンスもほとんどない。
解放されているトイレがほぼ全滅。あっても臭気で目が痛くなるほど不衛生。
エスカレータ、エレベータがほとんど設置されておらず弱者に厳しい。
構内に売店はほとんど無い(悪)。販売するものがないのにゴミ箱は多い(良)、なのに地下鉄の中も駅もゴミが散らかっている(結局悪)
運行中に勝手に停車駅を変更する。
平日の夜と、週末は終日、ダイヤが乱れまくる。メンテナンスと称して不通になる。
ねずみだらけ。
強く雨が降ったときや、エアコンが稼働しているときなど天井から水が漏れるほどボロ車両が現役。(車内でも傘が必要か)
人が乗り降りしていても平気でドアを閉める。
古い車両のせいでドアが閉まらないことがあるのに、車掌は「扉を押さえていると発車できねぇんだよ。これが続くとDischarge(故障扱いにするので全員降りろということ)するぞ」とヒステリックに叫ぶ。
地下鉄車内にホームレスが多く、臭い。
特に週末の工事には泣かされる人が多いはずだ。24時間営業しているしわ寄せが週末工事なら、24時間週5日営業ということになるわけで、果たしてそれがサービスと呼べるのかはなはだ疑問である。
日本にいる友達から「New Yorkのラッシュはどう? 東京並ではないと思うけど」と聞かれたことがある。
現状を言うと、New York でも朝はラッシュというものがあって、満員だと乗れないこともある。それでも押し具合は東京のラッシュアワーほどではなく服と服が接する程度で、隣の人にもたれかけられたり、強く押されるということがないぐらいのものである。
押せば確実にもっとたくさんの人が乗れるはずだが、そこまでしないというのが暗黙の了解にある。そのため人がたくさん乗った車両が来ると一本、または二本待たないと乗れないこともある。
見知らぬ他人と体を密着するような不快な気持ちになってまで電車に乗るくらいなら、遅れても次の電車を待つという文化の違いだろう。
手に持つ鞄を離しても落ちないくらい混み合う東京のラッシュアワーを知っている僕らからすれば、楽なラッシュだがそれでも朝はよく怒声を浴びせる輩が見受けられる。「もうこれ以上は乗れない」と乗客が、無理に乗ろうとする人に文句を言うことから端を発するのだが、どちらもどちらなので周りの人はたいてい無関心である。
人物ウォッチングが好きな僕など好奇心に負けつい振り返って「一体どんなやつらだろう」と顔を確認してしまうのだが。
運賃の割にあまりいいところの無い New York の地下鉄だが、いずれにせよ地下鉄やエレベータほど見知らぬ人同士が密室状態でこれほど接近するところもないわけで、接偶然乗り合わせたことで始まるドラマもある。地下鉄に乗る度に「あ、これはブログで紹介できそう」と思うシーンに出会うのだが、つい機を逃してしまう。
またいずれ地下鉄四方山話でも紹介することにしよう。